The Wind of Andalucia    〜 inherit love 〜

6. 変装



GM号に、軽やかに吹く風に、微かな甘い香りが漂う。
2、3日前から、気候が安定しだし、ログポースの示す島が近い事をつげる。
柔らかく暖かな日差しが、時折汗ばむ陽気が、次の島は春島もしくは初夏島である事を予測させた。


「さてと、ルフィの監視はウソップ、任せたわよ。チョッパーはゾロとセットで行動する事。
 サンジくんは、と食料調達。各自、解散!!」

島につく度に、ルフィの破天荒な行動に悩まされ気味のナミは、きつくルフィに言い聞かせ
島の状況判断がついてから、戻ったクルーと交代で、島を探索する事を約束させた。

「ちぇっ、つまんねぇ」
ぼやくルフィだけにしておくには、一抹の不安を感じるので、島に上陸してはいけない病の
出ているウソップと、監視につけるが。これもまた、少し不安である。

「わかった。オレ、ゾロの世話頑張るよ!」

「おい、ナミ!なんで俺はチョッパー付きなんだよ!」

「あぁん!!あんた!毎回毎回、迷子になってんでしょうが!!!」
粋な計らいに、感謝しろ!とばかりの、ナミの剣幕に、ゾロは諦め早々に船を降りていった。

「ロビン姉さん、お買い物いきましょう」

「ナミすわぁ〜〜〜ん。ナミさんの荷物持ち。このサンジが致します!!!」
いつものように、ラブコックモードでナミにハートの煙を飛ばす。

「ダメ!!」

「なんでですか!!?」

「今日は、サンジくんと出かける気分じゃないの」

「……仕方ないでずぅぅぅ。あきらべばずぅ」
表情が一転し、あぐあぐと、涙を浮かべるサンジ。まぬけ面である。

サンジとナミの会話を見ているは、サンジのラブコックぶりに、以前から感じていた
胸のもやもやした部分が大きくなるのを感じ、視線を逸らし、仄かな甘い香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。

「ん?どうした?」
の様子に怪訝そうに、サンジは聞いた。

「いや、いい香りのする島だと、思って」
辺りに漂う仄かな甘い香りに、どことなく懐かしいものを感じとるの顔に微笑が浮かぶ。

「そうか、行くぞ」
仄かに香る甘い香りに、表情がなごみ、微笑を浮かべる様に目を奪われながら
を促し、サンジは、船を降りた。

「ああ」
軽く、サンジの見て、続いて降りた。

「サンジくんvのお守りしっかりね〜」
ナミが、さらりと言った。

「は〜〜い!!!ナミすわぁ〜〜〜ん!!!って!!何言わせるんですか!?」
素直に返事をしつつ、己の言葉に戸惑い、慌ててツッコミを入れた。

「だって、は王子様で、まだ王位継承権を持ってるのよ。狙われる危険は、まだ、あるはず」
ナミが、しれっとした顔で言った。

「あっ!?そっちの意味ですか」
自分のに対する奇妙な感情が、どこまでナミにばれているか不安なサンジは、ほっとした顔になった。

「何よ、サンジくん、どう勘違いしたわけ?」
ナミは、うっすらと意味ありげな微笑を浮かべた。

「いや!何でもないです!」
    うぎゃ〜〜〜〜〜!!!どこまで、ばれてんだ!!!!。
    不味い!!俺ァラブコックサンジ、男に惚れたなんてェ〜〜えっ
    へっ?俺は???に?
ぶんぶんと、混乱する頭を振って、慌てて答えた。

「……悪いが、お守りをしてもらう気はない。だいたい、国を出た時点で、王位継承権など消滅しているはずだ」
その会話を見ていた、は軽く言った。

「あっ!そうか!!」
ナミは、あっさりと言うと、ロビンと共に、街へ出掛けた。

「はぁ〜たりィ〜。とっとと、行くぞ」
連れ立って立ち去る二人を、羨ましげに見ながらサンジは歩き出す。

「何で、私が荷物もちなんだ」
     サンジは、あの二人と行きたいのか
サンジの視線の先を気にして、は何とも思ってないことを言う。

「てめェ〜ただのになるんだったら、そんくらいやれ!」
サンジは真面目に、に答えた。

「……これも、経験ってことか?」
     サンジは、ナミが好きなのか
そんな言葉が返ることなど、予測済だが、あえて聞いた。

「そーいうこった!」

とぼとぼと、二人それぞれに考え事をして、街へ出掛けた。




買出し中のふたりを、物陰から、盗み見る集団。
みるからに、人相の悪い男達。
その中に一人、様相の違う男がいた。
人通りを避け、しきりに、の姿を伺っている。


「さてっと、大方の荷物は頼んだな。帰るか」
サンジは、タバコを噛みながら言った。

「えっ!サンジ、全部持って帰るのでは、なかったのか?」
荷物もちとして付いてきたはずなのに、何も持っていないは、怪訝そうにサンジを見た。

「アホか、てめェ。あんな量持てっかよ!配達頼んだし〜」

「おっ!てめェの服でも、見に行くか?」
思い出したふうに、サンジはの顔を覗き込んだ。

「私は、このままでいい!!!」
突然、サンジの顔がまじかにきて、わけのわからない感情がの顔を赤らめた。

「なんでだよ!!いかにも金持ちの子息みてェなの、やめちまったほうが、いいんじゃねェのか?」
にやにやと笑いながら、サンジは、の服をぴらっとめくった。


だだだっだだっと、周囲に人垣ができた。先程からの姿を伺っていた人相の悪い男達。

「何だ!!てめェーら!!!」
サンジは、目の前の男を、鋭く睨みつけた。

「お前に用は無い!殿下を渡せ!!!」

「けっ!いやなこった!!!」
言うが早いか、サンジの足が目の前の男を、蹴りとばす。

次から次へ、切り込んでくる男達。
口々に叫ぶ。
殿下だけ狙え!!」
「金髪ヤローは、ほっとけ!!!」
「剣を持ってないぞ!!!!」

蹴っても蹴っても、諦めず湧いて出てくる敵。
サンジは、敵を切り裂くの剣のきれが鈍り始めるのに、気が付いた。
「ちっ!きりがねぇ……。、逃げるぞ!」

比較的、敵の薄い所に、サンジの回し蹴りが炸裂し、逃げ道が出来た。

狭い通路を右へ左へと駆け抜け、辿り着いた先は、袋小路。

「くそっ!」
壁を蹴破り、民家を抜け、辿り着いた先は、何故か…「ブティックラム」




「ナミすわぁぁ〜〜〜ん。なんてあなたは魅力的なんだぁぁぁ!!!」
華麗な衣装を着たナミを見つけ、サンジの目がハートになった。
こんな状況でも、ラブコックになれるサンジの余裕に、は呆れていいのか、尊敬すべきなのか、一瞬迷った。

「サンジくん、どうしたの?」

「いや、ナミさんの言う通りでした。はまだ狙われています」

「…やっぱりね」

「じゃ〜v変装しましょうvこっちいらっしゃいvv」
ナミの目が、何かを企むときの光を帯びた。

「はっ???えっ???」
わけが分からず、引きずっていかれ、更衣室の中で、服を脱がされそうになり必死で、抵抗する。

「うわっ!!やめろ!!!何をする!!!無礼な!!!」

「はい!!さっさと、脱ぐ!!で、コレ、着なさいvv」

「げっ!!!!」

「ナミすわぁぁ〜〜〜んv本気ですか??うおぉぉおおおおおお!!」
サンジの目が、ぶっ飛んだ。

渡された物は、「白いミニ丈のドレス。白いブラジャーとショーツ」

「手伝う!!」
サンジの手に、ブラジャーがあり、サンジの目はハートになっていた。

どこん!!ナミの鉄拳がおち、サンジは更衣室から追い出された。

「どうしても……、着るのか?」
サンジの暴走ぶりに呆れつつ、手渡されたモノに困惑し、赤らむ顔を伏せて聞いた。

「そうよ、あんたネ、そんな服着てたら、王子ですって言ってるようなもんよ。女顔だし〜〜似合うわよvきっと」
何だか、それ以外にも目的のある顔つきで、あっさり言った。

「………」
祖母の呪縛に囚われて、手渡されたモノを直視できず、身動きの出来ないに、ナミの顔つきが変わる。

、あのね、素直になりなさい。コレを着るって事は、あなたにとって重要な事。
 私の言ってる意味。分かるわよね?」
言外に意味を残し、やさしい微笑を浮かべるナミは、そっと背中を叩き、出て行った。


ナミの言葉に押された背中が、震える。
喉が締め付けられ、息苦しい。

    私は、私は…このドレスが着てみたい。
    後ろは向かないって…決めた………
    コレを着るって事も、……そうなんだよな

色々な感情で、胸が苦しくなりながらも、は、一枚づつ服を脱いでいく。
     

まっさらになった身体に、女物の衣装を身につける。
生まれてこのかた、女であるが、男として生きてきたために着慣れない感触。

ブラジャー、ふっくらとした胸をやさしく包み、大きさを強調する。
ショーツ、薄い生地がヒップを、形良く丸く包む、はき慣れぬ頼りなさ。
白いドレスの肌触り、あらわになる柔らかな身体の線。
ミニ丈であらわになったすらりとした足。

どれもが、初めての感覚で、自分が女であることを意識させた。

鏡に映る自分の姿に目を逸らし、男装時の自信が音も無く崩れ、頼りない思いが、の心を支配する。

     これが…私なの・か?
     サンジは…どう思うのだろう……

は、サンジがどう思うかを、気にする自分に戸惑いを覚えた。


  

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