「ハァッ! ハァ・・ハァ・・・」
目が覚めるとそこは、自分の手足さえ見ることのできないような暗闇だった。
「なんだここは、誰か、誰かいないのか!?」
僕の呼びかけに答える者は誰もいなかった。
こう暗いのではここがどこなのかもわからない。僕は、壁伝いに明かりのスイッチを探した。
しかし三歩も進まないうちに足が止まった。
暗闇に恐怖したわけではない、右足が何かに繋がれているのだ。
僕は、しゃがんで足を締めている物を触ってみた。
それは、足首にピタリと吸い付くように固定されている。そこからかなり頑丈そうな太い鎖でどこかに繋がっていた。
(僕は、誰かに誘拐されたのであろうか)
僕の親は既に他界し家族もいない、仕事も所謂デイトレイダーといったところで、会社勤めという訳ではない。
なので、身代金目当ての犯行なんてことは無いだろう。
かといって個人的に僕に恨みを持っている人間なんていないハズだ。
僕は今日まで極力人付き合いという物を避けていた。
大体今の生業も引きこもりをこじらせて転がり落ちたところにあったような物だ。
取引もすべてネット上でのことで、直接人と会うことなどマズ無かった。

バシュッ

僕が足元の鎖を玩びながらグルグルと考えことをしていると、小さな噴出音とともにスライド式のドアの開く音がした。
「誰かいる? 誰かいるの?」
暗闇の先から若い女の声がする。それに僕はチャンスを逃すなといわんばかりに返事をした。
「ここにいる、ここにいるぞ!!」
「どこにいるの、暗くてわからないわ。明かりをつけて」
「こっちにスイッチは無い、それに僕は何かに繋がれていて、歩き回ることができない。
そっちにドアがあるなら、スイッチもそっちじゃないか? 探してみてくれ」
「わかったわ。ちょっと待って」
彼女かそう言うと部屋にコツコツと靴が床を叩く高い音が反響した。

パチ、ブゥゥーーン

蛍光灯の鈍い音とがすると、天井についた何本かの明かりが部屋を照らした。
長いこと暗闇に居たせいか目がくらむ。僕が反射的に手で目を覆っていると、彼女が慌てた様子で近づいてきた。
「大丈夫? 怪我は無い?」
僕は彼女の問いに無言で頷いた。
「お前ここが何か知っているか?」
「いいえ、知らないわ。目が覚めるとココにいたの。貴方は?」
「いや、僕も知らない。検討もつかない。君、名前は? 僕は森下総一郎だ」
「あら、貴方日本の人? 私はタニヤ。タニヤ・バイアー、ドイツ人よ」
僕はその言葉に驚き顔を覆っていた手を下げ、彼女の顔をのぞいた。
すると、そこには二十台前半といった感じの栗色の髪を持った。眼の青い綺麗な女性が立っていた。
「君は随分と日本語が上手いんだな。全く気がつかなかったよ」
これは、お世辞ではなく本当に彼女の日本語は上手かった。
きっと明かりをつけなければ気づかないままっだただろう。
「ありがとう、よく言われるわ。十三から十八の間日本にいたの。
今は、ドイツに戻って父の会社の運営を任されているわ。といっても今現在は囚われの身の上だけどね」
彼女は冗談っぽく言った。
「ところで、ソウイチロウって男の子の名前じゃないの?」
彼女は妙なことをいう。
「総一郎は男の名前が、何か問題でも?」
「何か問題でもって、貴方女の子じゃない。あ、ひょっとして名前のこと気にしてた?
ごめんなさい、そういうのもチャーミングでいいわよね」
どういうことだ?
僕は中世的な顔立ちでもなんでもなければ、いつも無精ひげをはやした、職務質問をされない理由は家を出ないから、
といった感じの男だぞ?
「ちょっと待ってくれよ、君は何を言っているんだい? 僕をからかっているのか?
そう言うのはいいから、早くココから脱出する方法を考えよう」
僕が少し、強く言うと、彼女は眉間にしわを寄せ答えた。
「いいじゃない、照れなくたって。可愛いわよソウイチロウ」
彼女は、僕の額にキスをすると、頭を何度かなでた。
「やめてくれ!」
僕は、そう言って彼女の手を振り払うと、少しあとづさりした。
「なによ、もう。そんなに怒らなくたっていいじゃない。わかったわよ、もうしないわ」
彼女はすねたように言った。
何なんだこの女は、この状況でどうしてこんなにふざけていられるんだ。

ふと冷静になると、何か違和感を感じる。この女嫌にでかいな。
身長183の僕を裕に超える大きさだぞ。2mはあるんじゃないのか?
周りの物もまた随分と大きくできて・・・・いや、違う!周りが大きいんじゃない、僕が小さくなっているんだ。
「ちょ、えっ? あ、え、あ、あぁー君、君身長は何センチ?」
僕は半信半疑で彼女に尋ねた。
「私? 167だけど? それがどうかして?」
167? 彼女が167だとすると僕はいくつだ? 150くらいか?
150といったら僕が小学生だった頃くらいじゃないか? これはいったい?
あらららと、体を眺めていると、やはり地面が近い。
それに良く見るとなにやら体が丸みを帯びているようなきがする。
もしやと思い、彼女がいるのをお構いなしでズボンに手を突っ込んだ。
やはり、僕の男のあのアレのそのソレは無くなっていた。
僕は、ことの状況に頭がスタンバイモードに突入し、床に膝から崩れ落ちた。
頭を抱え混乱に混乱を重ねていると、上のほうから彼女の声が聞こえてきた。
「急にどうしたの? 具合でも悪いの? 頭でも痛いの?」
僕は黙って首を横に振った。
「ねえ、どうしたのよ。黙っていては分からないわ。お姉さんに教えて?」
彼女は心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
「女になってる」
僕はソレしかいえなかった。
「え?」
「女になってる」
「何を言っているの?どういうこと?説明して。ね?」
「だから、体が女になってるって言ってるんだよ!! 昨日ベッドに入るまでは男だったのに!!」
僕は、理解せず何度も聞き返してくる彼女に、つい大きな声を出してしまった。
「どういうことよ、貴方男のこっだたの?」
「そうだよ、そう言っているじゃないか?」
「ちょっと待ってよ、貴方はどう見ても女の子じゃない」
「ちがうんだよ、僕は、正真正銘の男だよ」
「だからソウイチロウ?」
「そうだよ、そういうことだよ。なんなんだよいったい。この体といい、この部屋といい」
ガンッ!!
僕は、右のこぶしで思いっきり壁を殴った。
「ちょっと、やめなさいよ。そんなことしたって何の意味も無いわよ」
「わかってるよ!!わかってるよ、わたってるけど・・・」
「いいわ、止しましょ。とにかく今はこの部屋から出ることだけを考えましょう」
僕は、おとなしく彼女に従った。

部屋を見渡すと、床には一面の絨毯。
ドアは三つ、内一つは彼女がこの部屋に入ってきたときに開けたものだ。
部屋の中央には大きな卓があり、僕の足を繋ぐ鎖はこの卓の足にくくりつけてあった。
卓の足を持ち上げて鎖を抜こうにも、それは溶接でもされているのかびくともしなかった。
際目付けに、卓の上には一丁の銃がおいてあった。
もちろん弾も入っている。僕は、今まで日本から出たことも無いので、その銃にリアリティーを感じなかった。
ちょっとしたいたずら心でタニアに銃口をむけてみた。
タニアは驚いてこちらに走ってくると、僕の頬を一回バッシと叩くと手から銃をもぎ取った。
「なにやってるのよ!! 危ないことしないで!! 私を殺す気?」
「違うんだ、タニア。いや、だってまさか本物だったなんて」
「なにいってるの!? 本物かどうかなんて見れば分かるでしょ!」
「ごめんなさい」
僕は、彼女の怒りに、まるで体と同じ少女にでもなったかの様に目に涙を浮かべ謝った。
「ごめんなさい。私も強く言い過ぎたわ、ごめんなさいね。もう泣かないで、男の子なんでしょう?」
彼女はそう言って僕を優しく包んでくれた。彼女の胸で泣く僕は、本当に本当の少女のようだった。

ジジッ、ジジッ!

「なんだ?」
どこからか音がする、僕は、彼女からはなれ部屋を見渡した。
すると部屋の隅にあったスピーカーから何者かの声が聞こえてきた。
「お嬢さんたち、昨晩は良く眠れましたか〜?」
耳に着く嫌な声だ。
「誰だ、今すぐココから出せ!! 僕をこんな姿にしたのもお前か? 今すぐ姿を見せろ!」
僕もタニアも同じようなことを言った。
「お嬢さんたち、そう焦らないで。ちゃんと出してあげるよ。ただし、ゲームの勝者だけね」
「ゲームだと? ふざけるな! そんな物に付き合っていられるか。今すぐココから出せ!」
僕は、これ以上ないといった憎しみの表情で叫んだ。
「ちょっと待ってよ、何か勘違いしてない? 今の、君の状況わかってる?
どこかもしれない部屋に閉じ込められて外へのドアも開かない。食糧も無いし水も無い。
このまま僕が放っておけば一週間ともたないよ。それでもいいの?君達には選択肢は無いんだよ」
「わかった、やるわ」
今まで黙っていたタニアが突然口を開いた。
「ちょっとまてよ、タニア」
「じゃあ、どうしようって言うのよ。貴方にあのドアを開くことができるの?」
彼女はそう僕の目を見ていった。
「そうだけど・・・」
分かってはいるが納得がいかない。すると、
「相手の思い通りに動けばいつかきっとボロをだすわ。今は、あいつの思い道理にするのよ」
彼女は、僕にだけ聞こえるような声でいった。
「わかった。やろう。ゲームってなんだよ」
僕がそう言うと、またスピーカーから声が聞こえた。
「そうかい、そうかい。やる気になってくれたかい。そうでなくっちゃね。
ルールは簡単だよ。三人で殺しあって生き残った一人がそこから脱出できるってわけ。
簡単でしょ。じゃ、そういうことで。がんばってね〜」
「ちょ、え? 殺せって、え?」
僕が疑問を口にする前にスピーカーからの一方的な会話は途切れてしまった。

「タニア、これってどういうことかな」
「しらないわよ」
「まさか本気で殺しあったりしないよね」
「当たり前でしょ、あなた正気?」
「わかってるさ。でも・・・」
僕がそう言いかけたときまたスピーカーから声がした。
「あ、今タニアちゃんが銃を持ってるから、タニアちゃん一歩リードだね!」
ブチッ。
言いたいことだけ言ってまたその声はそれで途切れた。
しかし、僕達二人は、それど頃ではなかった。
そうだ、いま銃を持っているのは彼女。しかも、僕は、部屋の
中央で鎖につながれて一定範囲しか移動できない。
タニアが卓の反対側に行っただけで、僕は、彼女に触れることすらできないのだ。
彼女の圧倒的有利。
僕の圧倒的不利。
これは殺し合いのゲームではない。彼女の精神力を測るゲームなのだ。
しかも、僕の勝利は決してない。彼女が僕を殺し部屋をでるか。
一生二人でこの部屋の中に居つづけるかの問題だった。

僕達の間に長い沈黙が続いた。
それに耐えられなくなったのか、彼女が口を開いた。
「大丈夫よソウイチロウ、きっと誰かが私達を心配して探しに来てくれるわ。ゲームなんてする必要ないわよ。ね、大丈夫よ」
僕の心配をして探してくれる人間がどこにいるというんだ。
僕は、既に天涯孤独の身心配どころか僕の名を知る者もそういないだろう。
ふざけた話だ。無為に過ごしてきた結果がこれなのか。
「大丈夫よ、安心して。貴方は私が必ず守るわ」
彼女がまだ何か言っている。
「いいんだよ。もう、その銃で僕を撃てよ。バチがあたったのさ。生きることに意義を持たず無為にPCのモニターの前で過ごす人生のね」
「なにを言ってるのよ、そんな事言わないで。私と一緒にココからでる方法を探しましょうよ。きっと何かあるに違いないわ」
僕は、彼女の余りに楽観的な物言いに限界を超えてしまった。
「いいかげんにしてくれ! あんたの言葉は軽すぎる! そんなこと、幾らでも言えるさ。
あんたには、僕を殺すっていう決定的かつ安全な保険が、これからずっとあるんだからな!」
「そんな、あなた、、、貴方なんて事言うのよ。まるで私のことを簡単に殺人を犯せる人間見たいに」
「人は限界状態になればなんだってやるさ。目に浮かぶよ、何日後、何時間後、ひょっとしたら何分後かもしれない。
君が、ごめんなさいごめんなさいって泣きながら僕に銃口を向けるさまがね」
「やめて、それ以上言わないで。それ以上言われたら私何をするか分からないわ」
「分からないって何をするんだい? 僕をその銃で撃ち殺すかい? だったらいいじゃないか幾らでも言ってやるよ。
さっき、僕がその銃を見ていたとき時、君は慌てて僕の手から銃を奪い取ったね。
君には将来こうなることがわかっていたんじゃないかい?
テーブルにつながれた僕、テーブルの上にあった銃。テーブルにつながれている以上僕は自由に行動できない。
つまり君がもと居た部屋に戻れば僕が幾ら強力な武器を持っていても、それは何の意味ももたない。
自由な君、銃を持った不自由な僕。これでやっと50:50なんだ。
つまり、君は僕の手から銃を奪うことで僕の有利点を全て取り上げたのさ。
僕の顔が見るのが嫌ならもと居た部屋に戻ればいい。もとはと言えばソレがアイツの計算上の予定だろう。
きっと、僕の苦しむ顔を見ることなく隣の部屋から僕を殺せるなにかがあるかもしれないからね。きみは、一歩といわず何百歩も有利なんだよ」
「やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、やめて、やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
彼女は僕の方に銃口を向けた。
「いいよ、撃てよ。僕みたいに全てを捨てれば楽になるさ。
自分の弱さを受け入れて生きていけばいい。ゴミみたいな人間一人との対価として考えれば、それは素敵な物だろう?」
僕は、死を覚悟した。むしろこれでやっと意味の無い人生が終わってくれるのかと思った。
彼女は怒りと混乱と悲しみで震えていた。彼女がこのゲームの勝者だ。

バッシュ

僕がそう覚悟した瞬間ドアの開く音がした。
彼女がもと居た部屋へのとは違う。大きく2と書かれたドアだ。
ソレが開くと思うと、そこから小さな矢のような物がタニアに向かって飛んでいった。
トスッという音ともに矢は彼女の肩に刺さった。すると、彼女は、フラフラと床に倒れていった。
すると、2のドアから嫌な表情をした中年手前くらいの男が出てきた。
「んだよ、これ麻酔銃かよ!」
男はタニアの首に指を当てると脈を取り始めた。
どうやらタニアはただ眠っているだけのようだ。僕は、安心したがちょっと前から思えば随分な矛盾である。
すると男は、タニアの手から銃をとる、自分の腰にさした。
男は、どこから持ってきたのかロープでタニアを部屋の隅に縛り付けると、タバコに日をつけプカプカと吸い始めた。
すると、即効性な分効き目はそう長くないのか、タニアが目を覚ました。
「んッ。ちょっと、これはいったいどういうことなの? 貴方誰よ?」
彼女は男に尋ねた。
「あ? オレはバトッシュだ。別にいいだろオレが誰だって。関係ねーよ。このゲームの勝者はオレだ」
「ちょっと待ってよ、じゃあ、あいつが言ってた三人目ってあんたのことなの?
やめてよ、本気であんなもんに付き合う気? じょうだんやめてよね!」
「うるせーーよ!! オレは、もう決めたんだよ。メンドクせーことし無いでお前らを殺してここからでるんだよ!
オレは、お前らより1ヶ月も早くからここにいるんだよ! もうこのゲーム以外にココからでる方法はねーって一番良く分かってんだよ!」
静かな部屋にバトッシュの声がこだました。
バトッシュが僕を見ている。
僕は、男の視線に怖くなり少しでも遠くに逃げようとするが、
つながれている僕には他の部屋に行くことはおろか、部屋の中で奴から逃げ走ることもできない。
男はテーブルの僕に届かない場所に銃を置くと、僕に近づいてきた。
「ちょっと、ちょっとやめなさいよ、その子はまだ子供なのよ!」
タニアが男の背中に言う。
「うるせーよ、どうせお前らは死ぬんだ。オレが何したっていいだろ!!」
そう言うと奴は僕の肩を掴んだ。僕は必死に抵抗するが、男女の腕力さがありすぎる上に足の自由が利かない。
しかし、必死に上半身をふって抵抗していると、奴は僕のミゾオチを思いっきり殴りつけ、僕は床に崩れ落ちた。
呼吸ができず苦しむ僕などお構いなしに奴は僕をテーブルの上に押さえつけた。
やっとのことで呼吸を整えるも、男の腕が僕のズボンを脱がしにかかった。呼吸は落ち着いたものの体に力が入らない。
奴は、とうとう僕の衣服を全部脱がすと僕の唇に強引に唇を重ねた。
男に無理やり唇を奪われる気持ち悪さと恐怖に僕は身動き一つ取れないで居た。
奴は、僕のあそこを舐めまわすと、俗に言う前戯も無しにいきなり自分の物を押し付けてきた。
もちろんスムーズに行くはずもなく、てこずっていると奴は腹いせに僕の下腹部を思いっきり殴った。
今度こそ駄目だと思った。
すると、奴は細かく痙攣する僕の腰を抑えて、有無を言わずに入ってきた。
僕は、僕の体の中でブチブチと何かがちぎれるような音がした気がした。
「う、ぐぅ、や、めて。お、、、ね、、、がい、。もう、、、、やめて」
僕が痛みと痛みによる吐き気でもう男を跳ね返すこともできなかった。
僕は、男でありながら男のモノを受け入れ、いま純潔を失ったのだ。
もとはと言えば有りもしないハズのソレが今散っていったのだ。

いつのまにか僕は痛みを感じなくなっていた。
何も感じない、へそから下がフワフワと感じるだけだ。
僕の足の間で男が必死になって腰を振っている。
その姿を見ると何故かこの男が余りにも哀れな存在であるような気がしてしまった。
僕は、そんなことを思ってしまったせいたついバトッシュの首に腕をまわしてしまった。
見ず知らずの男、僕をレイプする男。
なのに、僕は、彼を愛らしく思ってしまう。僕の体に一筋の電撃が走った。
痛みではない、痛みではない何かが僕の体を突き抜けた。
いつのまにか、僕は、バトッシュの生み出す快感に夢中になっていた。
「アウッ、ウグッ! ハァハァハァ、いや、こんなの………」
だめだ、僕の体は、既にバトッシュと繋がっている。もう快感からは逃れられない。
膣の中で彼のモノが動いているのが分かる。もう限界が近いのだ。
それを感じると僕の体も何かが押し迫るように僕をかえていく
だめだ、だめだ。
「ああっ、だめ、だめ、ダメッ………!!!」
ドクドク
分かる。僕の中をソレが満たすのが嫌でも分かってしまう。
僕は体の奥からこみ上げる満足感に、これ以上無いほどの幸せな表情をしていた。
誰から言われたわけではないがきっとそうだろう。
彼も僕の上で幸せそうな顔をしている。僕は彼の頭を抱き返るとこの幸せな時間が永遠に続けばいいなと思った。

「もうやめて、今すぐ彼女を離しなさい!」
「え?」
僕は、首をタニアの方に向けた。部屋の隅に縛られていたはずのタニアはいつのまにか僕達の直ぐ近くまできていた。
バトッシュは慌てて銃に手を伸ばしたが、彼女の方が近かったため、あっけなく奪われてしまった。
彼女は、何の躊躇もなくバルトッシュの頭を打ち抜いた。
盛大に血飛沫を上げる彼の頭が、まるでアスファルトに叩き落したスイカのように輝いていた。
僕は、彼の脳漿と血を体全身で受け止め、放心状態で机の上から降りようともしなかった。
「さっきはよくやってくれたわね!」
そう言って、僕にいまだ圧し掛かっている彼の死体を蹴飛ばした。
彼は、ゴンという鈍い音がすると数回の痙攣を繰り返し、仕舞いには動かなくなった。
「大丈夫?」
彼女はそう言うと、僕に近づいてきた。
「ごめんなさい、私怖かったの、本当に怖かったの」
彼女が僕に涙ながらに謝った。
「ほら、結局そうじゃないか。結局は自分のことが一番大切なんだよ」
「そんなこと言わないで。助けてあげたじゃない」
「遅すぎるよ!結局僕のことなんてどうでもいいんだろ! 自分が大事なんだよ!」
「どうしてそんなこと言うのよ。そんな事いって最後は幸せそうな顔をしていたくせに!」
「うるさい、そんなこと無い! 僕は、本当に嫌だったんだ! 痛かったんだよ! 気持ち悪かったんだよ!」
僕がそう叫ぶと彼女は黙ってしまった。
少しの間の後、彼女が口を開いた。
「うそつき、本当は、最初からああしてほしかったくせに。男の癖にあんな幸せそうな顔して。うそつき、うそつき、うそつき、うそつき!!!!!」
そう言うと、彼女は先ほどまで自分を縛っていたロープで僕の腕を後ろ手に縛ると、乱暴にテーブルにねじ伏せた。
「え? ちょっと、ちょっとやめてよ、どうしたんだよ、怖いよタニア」
僕が不安そうに言っても、彼女は全く答えるそぶりを見せない。
彼女の瞳は、中に輝きの無い死んだような目をしていた。
「だったらいいじゃない、そうよ、だったら私がやってあげるわよ」
会話になっていない言葉を虚空に吐くと、彼女は、銃の銃身側を持つと、迷いもなく、マガジン部分を僕の膣にねじ込んだ。
「ぐぅがが、、ぐぅあぁぁぁl!!」
僕は、余りの痛みに気が狂いそうになった。
流線型でもなければ、硬い無機物を迎え入れるほど僕はまだ経験があるハズも無かった。
彼女は、痛みでもだえ苦しんでいる僕にお構いなしに、その行為を一向にやめようとしない。
僕のそこは、既に血が流れ出していた。
何度も何度もその行為をされ段々痛みを感じなくなっていった。
僕は、もう何も感じなくなり、ただ涙をこぼすだけであった。
「ねぇ、気持ちいい?」
彼女の問いに僕は、無言で首を振った。
「どう? 幸せ?」
彼女は僕に優しく尋ねた。
そんな問いにも僕は、涙を流すだけであった。
彼女は僕にキスをすると、今度はゆっくり動かし始めた。
すると、僕の中に明らかに痛みとは違う物が生まれてきた。
「いやぁ、まって、またなのぉ? いやぁ、、、もういやなの、、」
その反応に気を良くしたのか、タニアは、また強引に荒々しく口付けをした。
口内を暴れまわる彼女の舌を、いつの間にか僕は求めるように追い掛け回すようになっていった。
「ん……、いやっ………またきちゃうぅ………。いやッモウゥッっダメッ!!」
体の中から真っ白な爆発が起こったと思うと、僕は、手足を張り詰め体の中から湧き出てくる快感に全てを流されてしまった。
一定の波が過ぎても、全身がピクピクと痙攣を起こし、体に自由が戻らなかった。
その間も、タニアは僕に唇を合わせる。この行為が、とても暖かく包み込まれているように感じた。
彼女は、立ち上がると、僕に、冷たい、しかし興奮した表情を向けた。
彼女は、もう人の命を弄ぶ快感のとりこなのだ。

長いこと硬直していた足の間から先ほど受け入れたバルトッシュの精液が僕の血にまみれ、ドロリと逆流してきた。
どうもむず痒い感じがした。
すると、それに気がついたタニアは無言でソレを指でぬぐうと自分の口に突っ込んだ。
僕は、その行為に激しい嫌悪感を覚えた。
吐き気を催すと、僕の上に陣取っていた彼女を無理やりどかし、体を横にしてテーブルの下に嘔吐した。
まるで食道から体内の内臓が全て出て行ってしまうのではないかと思うくらいはきつづけた。

「もう我慢できないの」
彼女はそう言うと僕の眉間に銃口を当てた。
僕は、直面した死に、ただただ恐怖するだけだった。
「あなた、震えているわよ。怖いの?」
彼女は僕の口の端を吊り上げると笑顔を作って見せた。引きつった笑顔を作られた僕に彼女は再びキスをした。
「うぅ!ケホ、ケホッ」
彼女の唇から先ほどの精液と何かカプセルのような物が僕の口内に流れ込んできた。
慌てて彼女を僕の上からどかすと、できるだけ遠くに逃げた。
「何を飲ませた!」
僕は、彼女に聞いた。
「なにって、貴方が言っていたのよ。あんたの部屋にも何かあるんじゃないかって。
まあ、あの時はもう持っていたんだけどね。こういうために使う物だとは思わなかったわ」
そういうと、彼女は名刺ケースくらいの大きさのアルミケースを僕に見せた。
「最初は自殺用に誰かが置いていった悪趣味だと思ったわ、ご親切に説明書つきよ。でも実際は私に与えられたゲームのアイテムってところだったのね」
そう、出会った当初とは全然違う彼女が言った。
これから体内に回るだろう毒をお供に死のカウントダウンが始まった。
すると、僕の目から自然と涙がこぼれてきた。ここまで来ると何故か悲しいという感情は生まれてこなかった。
しかし、何故だろう。涙は一向に止まらなかった。
タニアは、僕の顔に舌を這わせると、頬を伝う涙を舐め始めた。
「可愛いわ、あなた最高に可愛い。最高よソウイチロウ。殺すには勿体無いわ」
白々しく彼女はいった。
「やめてくれ、ゲームには君が勝ったんだ。もういいじゃないか、放っておいてくれよ」
「そんな連れないこと言わないで、いいわ、私とゲームをしましょう」
「ふざけるなもう僕に構わないでくれ」
「でも、ココに解毒用のカプセルがあるとしたら?」
「なんだって? だったら、今すぐよこせよ!」
僕は、彼女に飛びついた。しかし、彼女はひらりと身をかわすと僕からての届かないところまで言ってしまった。
「焦らないで、ゲームのルールは簡単よ。私からこの薬を取ればいいのよ」
そういうと、あろうことか彼女は、自分の膣の中にその赤いカプセルを入れた。
てを後ろ手に縛られている状態では、そんなところからモノを取り出すなんて明らかに無理だ。
「舌よ、舐めてよ。舌で、出せばいいじゃない」
最低だ。彼女はゲームなどといって僕の命を弄び快感を得ようというのだ。
しかし、僕に残された道は、ソレしかなかった。
先ほどの逆と立場となった僕達は、テーブルに腰掛ける彼女のそこを僕が一生懸命、冗談ではなく命がけで舌を入れた。
「いいわ……貴方上手よ………あぁ…んっ」
彼女は僕の心情も知らず、一人快楽に体を任せていた。
「あぁん…あぁん……あはぁ」
しかし、一向にカプセルは見つからず、ただ彼女に快楽を与えるだけだった。
時間は無常にも過ぎていく、段々息が苦しくなってきた。もう限界なのだろうか。
「あぁ……ん、もうイキそうっ!」
「ん……あぁぁ、来ちゃう来ちゃう、ンッ、、イクゥゥッ!!」
彼女はとうとう果ててしまった。しかし、カプセルは見つからなかった。
僕は、絶望のせいか、体に回った毒のせいか、立っていられず膝から崩れ落ちた。
が、床に激突することは無かった。タニアが僕を抱きかかえたと思うと強引に口付けをした。
すると、なにやらまた薬のようなものを飲まされてしまった。
「今度は、なに?」
僕は、こんどこそ本当に死の直前だと思い、半ば悟ったかのように穏やかに彼女に聞いた。
「解毒剤よ、本当は、いれてなかったの。だってそうでしょう、本当にするとは思わなかったんだモノ」
そう悪戯っぽい笑顔で彼女はいった。
「あなた本当に可愛いわ、合格よ。私が飼ってあげる」
「どういうことだ」
僕は、今にも途切れそうな意識を、必死に保とうとした。
「つまりこういうことよ」
そういうと、彼女がなにやら合図をすると、3番のドアが開く。
そこから何人もの白衣をきた者たちが部屋の中に入ってきた。
すると、ストレッチャーの上に僕を強引に固定する。
僕は、薄れていく意識の中で必死に抵抗したを試みたが。そこを境にとうとう、僕の意識は飛んでいった。

目を開けるとそこには硬いベッドの上だった。
私が上半身を起こすと、ツンとした薬の匂いが僕の鼻をくすぐった。
「えっ! ナターシャ気が付いたの!?」
声がした方に首を向けると、ナースが点滴のパックを持ったままこちらを見つめながら硬直していった。
数秒後、時が急に動き出したかのように彼女は動き出した。
ナースコールのスイッチを押すと、マイクに向かっていった。
「ナターシャが目を覚ましました。先生を呼んでください。あと、彼女のお姉さんにも連絡をとって!」
彼女は続けて私に言った。
「大丈夫? どこか痛いところは無い?」
私は、無言で首を振った。
「ナターシャ、いまお姉さんが着てくれますからね。よかった。本当によかった」
彼女は泣いて感動していた。
(ちょっと待ってくれ、私は、ナターシャなんかじゃない。私の名は……。何故だ、名前を思い出せない。
ナターシャではない。ナターシャでは無いんだけれども。違うことは間違いないんだけども、何故か思い出せない)
私の思考は、「お姉さんがいらっしゃったらよ」という一言によって中断された。
(ちょっと、まてよ、お姉さんてだれだよ。私には兄弟なんかいないぞ。もしかして、ナターシャの姉か?
いや、もしかして、というかソレが自然な考えだ。いやしかし、ベッドの机においてある鏡に映った姿は、あの、少女となった私の姿のままだった)
個室のドアが勢い良く開くと一人の女性が入ってきた。
ナースは彼女のことをお姉さんとよんだ。
やはり、彼女はタニアであった。
タニアは病室に入ってくるなり私を強く抱きしめ涙を流した。
後から入ってきた医師やナースたちも私達をみて感動していた。
「よかったわね、ナターシャ」
ナースが言った。
(違うんだ、こいつは、こいつは)
「うん、ありがとう。タニアお姉ちゃん、会いたかった」
私の口は、何故か考えとは正反対のことを言った。
(違うん、こいつは)
私は、タニアの腕の中から抜け出ようとした。
緊張して体を強張らせる私に気がついたのか、タニアは、私にだけ聞こえるような小声で言った。
「駄目よ、ナターシャ。まだゲームに付き合ってもらうんだからね」
横目で見た彼女の顔は、あの時の光を失った瞳を持っていた。


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