若妻蘭世の日常
朝6時半、横で眠っている俊を起こさないようにそっとベッドを抜け出すとキッチンへ向う。俊が起きてくるまで30分、手早くご飯とお弁当を作る。新婚らしく真っ白のディッシュにのせられた朝食は日替わりで和食やら洋食やらが並ぶ。今日は和食らしい。
「おあよ〜・・・」
あくびをしながら入ってくる俊に目覚めの冷たいミネラルウォーターを渡すとセッティングを開始する。身支度を整え俊が再度リビングに来るときには炊き立てのご飯と湯気のたったお味噌汁、そして焼き魚といった朝食が整っているというわけだ。
「ご飯もう少し食べる?」
「・・・いや・・・・お茶くれよ。」
あっという間においしそうに食べてくれる俊を微笑んで見守る。妻であることの喜びをかみ締めながら。
「どうした?」
片手で新聞を開きながら俊は一瞬蘭世に視線を送る。
「ふふ・・・なんでもなぁい。」
軽やかな足取りで片付ける蘭世、そんな蘭世に気付かれないように俊は俊で別な思いを持っていたようではあるが・・・。
蘭世は袋に入ったお弁当をダイニングテーブルへ置く。
「ああ、さんきゅ。」
ひとしきり新聞に眼を通すと俊は袋とかばんを持ってジムへと出かけていく。
「いってらっしゃ〜い!!」
アプローチまでいっしょに出て俊の姿が見えなくなるまで見送るのが毎朝の日課であった。雨の日だけは俊が必死で止めるので玄関だが。

9時。
朝のある種のあわただしさも過ぎゆっくりと午前中いっぱいかけて掃除やら洗濯やらをこなす。俊の下着を干すのはまだ、少しテレがあるらしく顔を赤らめながら干していることも多い。ちなみに前の夜激しかったりするとなおさらである。

12時。
お昼は一人なので簡単に済ますことが多いが、友人と会うときなんかはちょっといいレストランなんかにもいったりする。今日は一人なので、たらこのクリームパスタだ。

午後。
日によってまちまち、大概はゆっくりと過ごす。遅くなってくると近くの商店街まで買い物に出かけます。今夜の夕食は何にしようかな・・・・。

夕方から宵の口。
夕食の材料は大概毎日新鮮なものを買い求めてくる。俊のため身体にいいものを食べさせたいといういじらしいほどのかいがいしさ。今夜の材料を覗いてみれば・・・・
・ 新鮮なタイのお刺身
・ 殻つきのえび
・ 鶏肉
・ ゆりね
あとは冷蔵庫に残っている材料を使って何かを作るらしい。なんだろう・・・。
ちょこまかとキッチンで動き回って忙しくしています。

夜。
たいてい一定の時間に俊は帰ってきます。
「ただいま・・・。」
「お帰りなさい。お風呂にする?ご飯にする?」
「・・・・ん、飯くれ。腹減った。」
「は〜い。」
俊からに中身の無いお弁当箱を受け取ってシンクに置く。そうしながら料理の最後の仕上げに取り掛かる。俊は着替えに行くようだ。ラフな格好になった俊がキッチンを覗きにくる。
「いい匂いだな?なんだ?」
「今日はねぇ、中華なの。」
テーブルの上にはタイの中華風お刺身カシューナッツ添え、茶碗蒸(中華あんかけ)、アツアツのたまごスープ、ご飯、そして最後にエビの唐辛子炒めである。
「出来たよ。はいどうぞ。」
「これ、ねぎ入れないのか?」
「私のはね。俊のには入ってるよ。」
「いただきます。」
行儀よく食事する二人であった。

夜更け。
俊のあとにお風呂に入るとかわいらしい今日は純白のナイトウェアを身につけ寝室へとあがる。小さなライトがついた中、ドレッサーの前に座り髪を梳かしている蘭世をじっと見つめる俊と目が合う。
「なぁに?」
「・・・ん・・・」
鏡越しに俊が近づいてくるのがわかる。どんなに肌を重ねてもどきどきする瞬間。俊がそばにきて後ろから蘭世を抱きしめる。
「・・・おせぇよ・・・」(おい、まだ9時過ぎたくらいなんだがな・・・by作者)
「だって・・・片付けとか・・・」
蘭世の主張はいつも俊の唇に吸い込まれてしまう。長い夜の始まりの合図。あごを持ちあげられキスが降って来る。ちらりと鏡に映る自分を見ると恥ずかしくなってしまう。
「・・・・・あ・・だめ・・・・」
隙間から小さな拒絶、聞いてもらえないのは百も承知なのに相変わらず初々しく、俊をそそっている。蘭世をそのまま抱き上げるとベッドへと横たえる。そして今度は苦しいぐらい熱いキスを与えられる。

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