・・ぴちょん・・・・・
窓を落ちる雨音が部屋に響く。
静かな時間。
さっきまであんなにはしゃいでいたのに。
小さなちゃぶ台の上にはアルミホイルがいくつかと二つのマグカップ。
まだ少しぬくもりも残っている。
沈黙を破ったのは彼女の方だった。
「・・・ありがとね。」
「ああ・・・」
「じゃ、帰る。」
立ち上がりコートを着ると彼女は玄関に向かった。
彼はそれを見送るように眼を向ける。
「・・・・・・ねぇ?」
「何だ。」
「何故、彼女なの?」
「・・・・わからねぇよ。いまでもな。」
苦笑交じりに彼が答えた。
「私じゃ、駄目なのね?」
「・・・・・」
一瞬の戸惑い、そしてきっぱりと。
「ああ。」
「・・・判った。ありがとう。最後にきちんと言ってくれて。」
「お前は大切な友達だからな。」
「・・・・・うん。」
目じりに光ったものは互いに見なかったことにして、アパートの扉が開き、そして閉まるー
ふうと大きくため息をつくと彼はちゃぶ台を片付ける。
控えめなノックの音がした。
2度。
「誰だ?」
「私・・・」
ドア越しに小さな声。
それだけでも相手がわかる。
「ああ、開いてるぜ。」
ドアが開く。 |