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ひらりひらり
春風に乗って部屋の窓に薄桃の花びら。
・・・・・・・桜・・か・・・・
俊はぼんやりとその花びらを手の平に乗せた。
もう夜も遅い。
先ほど帰ってきていつものように玄関にかけてあった弁当を食べたところ。
ありがたいと思いながら毎日食べているもののなかなかそれを伝えるすべを知らない。
「・・・ふぅ・・・」
ごろりと畳の上に寝転がる。
春にしては温かいその日は窓を開けたままだった。
・・・・・・思い出したのはいつかの花。
異国の地で。
自分ではない自分で。
一瞬、思い出したあの時もー
・・・もうちょっと白かったな、あれは・・・
「桜ももう終わりなんだな・・・」
そう思いながら俊は起き上がり窓を閉めた。
もう一度ごろりと、今度は枕を持ってきて寝転がる。
目を閉じるといろいろなことが思い出される。
そのどこにも彼女がいた。
泣き、
笑い、
拗ね、
怒る、
どの表情も、余すことなく思い出せる。
そしてどの表情も自分にだけ向けられるものがあるとも知っている。
・・・・俺は何をしてやれているんだろう・・・・?・・・
思い返せば、何もしていない気がする。
そう考えながらいつしか眠りに吸い込まれていく・・・・・
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