『いぼんの書〜なつかしいあなたへ〜』

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第6話

 あはははははははははははははははは…………

 闇の世界には

 混沌の哄笑だけが

 続く

「あはははははははははははははははは…………」

 そして、その哄笑が、自分自身が笑っている事に気付いた時――

「あははははははははははぅうわぁああああああああああ――っ!!!」

 僕は絶叫しながら、唐突に目覚めた。

「うわぁああああああああああ――っ!?」
 むにょん
 ばね仕掛けの人形みたいな勢いで跳ね起きた僕を、何か柔らかいものが受け止める。
「目が覚めたか」
 しばらく、目の前に何があるのかわからなかった。暗闇から急に明るい場所に出た時と同じように、視界が白くハレーションを起こしてくらくらする。やがて、目の前にあるのは白い光源ではなく、汚れ1つ無い純白の白装束である事に気付いて――
「うわぁ!!」
 もう一度、僕は素っ頓狂な声をあげて高速後退りした。
「気をつけなさい」
「え?」
 警告はちょっと遅かったみたいだ。
 ベッドの端から滑り落ちて、見事に脳天逆さ落としを決めた僕は、あまりにも白く清過ぎる『大帝』――“のーでんす”さんの姿を、上下逆さに確認する羽目になった……

「すまぬ。“ブラックメイド”に引き込まれた虚数空間からの脱出に手間取り、そなたの救出が遅れてしまった」
「あ、いや、こちらこそ」
 数分後、これまた染み1つ無い真っ白な包帯を頭のコブに巻いてもらいながら、僕はなんとなく申し訳無い気分で“のーでんす”さんに頭を下げた。最近、誰彼構わず頭を下げまくってる気がするなぁ。
 “のーでんす”さんの話によると、僕の魂が完全に混沌の渦に飲み込まれるギリギリの所で、彼女が救出してくれたそうだ。後1歩遅かったら、僕の魂は混沌の渦の中で完全に破滅していたらしい……
……混沌の渦って何? やっぱり死亡患者カードを隣に移動するのかな。
 “ブラックメイド”さんの姿は、いつのまにか消えていたらしい。“のーでんす”さん曰く、あのまま逃げ出すようなタマじゃないらしいけど……ヘッポコだからなぁ。
 まぁ、それはそれとして――問題は別のところにあった。
「……ところで、ここはどこなんでしょう?」
 僕と“のーでんす”さんがいる部屋――八畳の洋室に配置されている家具は、
“しょごす”さんが毎日シーツを替えてくれるベッド。
いつのまにか“いたくぁ”さん愛用の湯呑が置かれたちゃぶ台。
半分ぐらい“てぃんだろす”が読む漫画が詰まった本棚。
幾多の修羅場を共に乗り越えてきた仕事用のパソコン――
そう、ここは僕の自宅の私室に間違い無かった。
子供の頃につけた壁の傷も、先日“てぃんだろす”が転んでアイスココアをぶちまけた絨毯の染みも、全てが僕の記憶と相違無い光景だ。窓の外も、いつもの町並みが広がっている。

 しかし――
「ここはそなたのいた世界ではない。“ブラックメイド”が作り出した偽りの世界だ。彼奴が何を考えてこのような世界を作り出したのかは謎だが、ここから脱出するには内側からでは少々骨が折れるな。外からなら比較的楽だが……」
 なるほど。“のーでんす”さんの言う通り、ベランダから外を見ても人っ子一人歩いていないし。年中渋滞している大通りには車が一台も無い。それ以前に、虹色に蠢く空に漆黒の太陽が輝いているのは、異世界の証明としては露骨過ぎた。
「でも、脱出してからはどうするんですか?」
 とりあえず僕はお茶を煎れて、ちゃぶ台の向かいに立つ“のーでんす”さんに勧めたけど、彼女は見向きもしないで壁のあちこちを白い手でさすっていた。隠し金庫でも探しているみたいだけど、たぶん外に出る方法を探しているのだろう。
「無論、“ブラックメイド”の陰謀を打ち砕く」
 返事は1秒の間も無い速さだった。
 思わず、湯呑を傾ける手が止まる。
「……だが、“はすたー”達を直接封印する解決法とは、別の方法を考察してみようかと思う」
「本当ですか!?」
「あくまで考察だ。他に解決方法が無ければ、私は躊躇わず最初の手段を選ぶぞ」
 “のーでんす”さんの声には少し笑いの因子が含まれているように聞こえた。
「不可能を可能とするのが神の本領ならば、少しは神様らしい所を見せてやらなければな」
「ありがとうございます!!」
 僕は心の底から感謝しながら、“のーでんす”さんの後姿に頭を下げた。
 ……さて。
 僕はお茶を飲み干してから立ち上がり、“のーでんす”さんの背後に忍び寄った。
「“のーでんす”さん」
「なにか――」
 ガッ
 重く乾いた音が部屋に響く。鮮血が白い髪をばっと赤く染めた。

「なっ……!?」
 よろめく“のーでんす”さんの頭に、続けて何度も何度もゴルフクラブを叩きつける。折れ曲がったゴルフクラブが翻る度に、真っ赤な血が線状に飛び散って、部屋のあちこちに奇妙な交錯線を描いた。あーあ、また掃除しなくっちゃな。
 ぱきっ!
 顔面に命中したゴルフクラブが翁の仮面を叩き割る。人間で言えば三十代前半くらいの、クールで冷徹そうな素晴らしい美貌が露出した。肌も眉も歯も白く、瞳と紅を塗った小さな唇だけが、黒く赤い。僕が遭遇してきたあらゆる『邪神』の皆さんの中でも、最高ランクの美女だけど、こうしてかち割られた頭からダラダラ血を流している姿を見ると、興醒めだね。
 ぼきっ
 ありゃ、ゴルフクラブのヘッド部分が取れちゃった。ちょっと勿体無いなぁ。
「……な……なにを…する……のだ……」
 ぐったりと床に伏したまま、息も絶え絶えな様子で僕に血まみれの顔を向ける“のーでんす”さんに、僕はにっこりと笑いかけた。
「いやぁ、“つぁとぅぐあ”さん達に酷い事したでしょう。ちょっとお灸をすえようと思いまして」
 “のーでんす”さんは震える手で僕に扇子を向けて……何も起こらない。
「……馬鹿な……くっ…私の……力が……封印…されているだと…っ!?」
「あ、それは“混沌化”ですよ」
「…なっ……まさか……そなたが…!」
「ちょっと“ブラックメイド”さんに魔改造されましてね。今の僕は“のーでんす”さん専用の“混沌化”発生装置みたいなものです。僕を助けてこの世界に来た瞬間から、貴方は何の力もないただの女になっちゃったんですよ」
「くううっ……!!」
 唇をかみ締めながら、片膝立ちしようとする“のーでんす”さんだけど、僕は湯呑の中から拳銃を取り出して、彼女の両肩と太ももを撃ち抜いた。
「くあぁああああっっっ!!!」
 無様に床に崩れ落ちて、のた打ち回る“のーでんす”さんを見下ろしながら、僕は拳銃をマッチ箱の中に仕舞った。この世界の中では、僕は万能の力を使えるんだ。
「神様の力って面白いですね。さぞ僕達人間がちっぽけに見えた事でしょう」

“のーでんす”さんを仰向けに蹴り転がして、腹の上にまたがり、白装束を引き千切る。想像通りのボリューム満点な白い乳房がぶるんとまろび出た。仰向けなのにしっかり天を向いた見事な爆乳は、薄いピンク色した小ぶりな乳首の形も良いし、成熟した女性特有の腐肉のような感触も心地良さそうだ。
「や…やめろ……正気に戻…ぁああ!!」
 また五月蝿く喚き始めたので、乳房をぎゅっと握り締めて黙らせる。愛撫ではなく、手の痕が痣となってずっと残りそうなくらい乳肉の弾力を試してやった。乳房が瓢箪みたいな形に変形するのが面白くて、僕は爆乳の根元から乳首の先端まで、色々な場所で握力測定と洒落込んだ。
「んぁあああっ!! 痛あぁ……やめろっ! あうぅ! やめてぇ……」
 ――数十分後、紫色に変色した乳房は倍くらいに腫れあがって、乳頭から脂肪混じりの血を垂れ流していた。
「……え…ああぅ……ううぅ……」
「いい歳して泣かないで下さいよ。神様のくせにみっともない」
 おっぱいで遊ぶのに飽きた僕は身体の向きを変えて、“のーでんす”さんの腰を背中側から抱きかかえた。両足首を天井隅から伸ばした鎖で縛り、無理矢理開脚させる。こうすると、彼女の無防備な股間が丸見えだ。
「ううぅ……やめ…てぇ」
 震える声での懇願をスルーして、白袴の股の部分を引き裂く。下着は付けてないらしく、白く柔らかそうな陰毛に彩られた性器とむちむちした尻肉に半ば隠れたアヌスが顔を出した。ふーん、白いヘアなんて始めて見たよ。
「あーあ、毛がボーボーですね。あまり処理してないでしょう? 性器どころかアヌスの周りにまで生えてますよ」
「…そ、そんな事は……ぅううっ!」
 みっともないので、十数本まとめて指先で摘み――一気に引き抜いた。

「ひゃうぅ!!」
 抜けた毛穴からビーズ玉みたいな真紅の鮮血が滲み出る。白い肌と相俟ってとても綺麗だ。
「…はぁ…はぁ……んぐぅ!?」
 捨てるのも勿体無いので、抜いた陰毛は“のーでんす”さんの口の中にねじ入れる。
「ほら、よく噛んで食べて下さいよ。自分のなら嫌じゃないでしょう」
 嫌悪感に顔をしかめさせながら吐き出そうとするけど、
「いたぁああっ! やめてぇ! 食べるっ! 食べますからぁぁ!!」
 鬱血している乳房をもう一度握り締めると、涙を流しながら喜んで陰毛を咀嚼してくれた。そんなに美味しいのか。じゃあ、もっと食べさせてあげよう。
 ぶちっ ぶちっ ぶちっ ぶちっ――
「んはぁ! 痛っ! いたぁああ!! あむうぅぅ!!――」
 数分後――少女のように一本の毛もない性器周辺は、毛穴からの出血で真っ赤に彩られていた。
「ひっく……ううぅ…なぜ……そなたは…ううっ……」
 最後の一本まで自分の陰毛を食べさせられた“のーでんす”さんは、何が悲しいのか大粒の涙を浮かべてべそをかいている。本当に泣き虫だなぁ。
「…混沌に……飲まれてはいかん…自分の意識を……くうぅ」
 何だかブツブツ呟いているけど完全に無視して、僕は剥き出しになった性器を指で弄ってみた。外見年齢にそぐわない綺麗な性器だった。ビラビラも小さいし、色も綺麗なピンク色だ。クリトリスもほとんど皮に包まれている。どうやら、セックスの経験は皆無かそれに近いらしい。
「“のーでんす”さんって処女ですか?」
「な、何を言って…ぁああ」
「じゃ、確認してみますね」

 僕は足元に散らばっている、彼女愛用の扇子を拾い集めた。とりあえず10本くらい束ねて、ほとんど口の開いていないヴァギナの上に立てる。
 そして――
「あぁあぐぅううああああぁやぁああああああ――!!!」
 全体重をかけて挿入した。
「痛ぁいたあああぁいぃいい!!! だめぇだめだめダメぇえええ!!!」
 全身の骨がバラバラになりそうな勢いでのた打ち回る“のーでんす”さん。よほど痛いのか、銃弾を撃ち込まれた手足までばたつかせている。どうやら処女だったらしく、純潔の証がヴァギナから溢れ出てるけど……この出血量は、単に膣壁を傷付けただけかな。それにしてもこの暴れ方。膣口を直径15センチ以上に広げられたくらいで大げさな。
「ん、ちょっと引っかかったかな?」
 扇子の本数が多過ぎたのか、さすがにちょっと入れにくいけど、扇子の上を拳でガンガン叩いて無理矢理押し込む。
「んくふっ!!」
 突然、“のーでんす”さんの身体がビクっと痙攣すると、そのまま動かなくなってしまった。ダメだなぁ。勝手に気絶するなんてマナー違反ですよ。
 とりあえず、アナルにも同じ数の扇子を叩き入れた。
「あがぁ!!」
 たちまち絶叫を上げて跳ね起きる“のーでんす”さんの股間を弄びながら、僕はこれからの楽しい日々に思いをはせていた――

 3日後――
「んぐぐぐぅ……んぐぅ! んふぅぅ!!」
「何言ってるのか分かりませんよ」
 まぁ、口の中に直径5cmのバイブを喉の奥まで突っ込まれていては、しゃべるどころか呼吸も大変だろうけど。
「じゃあ、次はハンドミキサーを入れてみましょうか」
「んふぁぅ!」
 天井から両足を広げるように逆さ吊りにされて、全身を鎖で雁字搦めに拘束されてる“のーでんす”さんが、必死の表情で首を左右に振った。しかし、どんなに態度はつれなくても、その白い肌は赤く上気して、瞳は快楽に蕩けている。乳首の先端とクリトリスに刺さった点滴から、常時高濃度の媚薬が注入されているからだ。
「じゃあ、いきますよ」
「んぐぐぅ!」
 “のーでんす”さんの股間に突き刺さっていたビール瓶を抜き取り、愛液でべチョべチョに濡れて開きっぱなしのヴァギナに、入れ違いでハンドミキサーを挿入した。御家庭で手軽にホイップクリームが作れる、金属製の洋梨みたいな形をしたアレだ。ちなみに、アヌスの中には熱々のゆで卵を十個入れてある。
「んうんぅんんんぅぅぅ……」
 涙目で僕に何か訴えようとしている彼女だけど、気にせず僕はスイッチを入れた。
「んぐはぁうううううううう!!!」
 機械的な音を立てて、勢いよくハンドミキサーが回転を始めて、膣肉を滅茶苦茶にかき回す。愛液が白い泡となって噴水のように噴出して、本当にホイップクリームみたいだね。

 ……こうした一連の行為は、全てこれから始まる陵辱調教の為の基礎訓練だ。“のーでんす”さんは本当にエッチの経験が少なくて、基本的な事から教えなければならない。まずはどんな物でもヴァギナとアヌスで受け入れられるようにする為の訓練から始めなくちゃ……
「んふううぅぅぁああっ!!」
 突然、にゅぽんにゅぽんにゅぽん……とマヌケな音を立てて、彼女のアナルからゆで卵が立て続けに飛び出してきた。どうやらハンドミキサーの刺激が強過ぎて、御尻の方が我慢できなくなったらしい。
「あーあ、まだ5時間しか経ってないのに……お仕置きですね」
「んんん、んふぅうう……」
「代わりに入れるものを以下から選んでください。
1.猛獣用大型スタンガンを最大出力で挿入後放置。
2.硫酸浣腸5リットル注入後放置。
3.食肉性の毒蟻を一万匹挿入後放置。
……あ、放置期間は48時間ね」
「んぐんんんっ!! んっ! んんん〜!!」
「イヤイヤしてもダメです。まぁ、これで最後だから安心してください。終わったら実戦演習です。浮浪者5万人全員を満zokuさせるまでノンストップで輪姦されてもらいます……
……ところで、まだ選べないのですか?」
「ん、ん、んんんぅううう!!」
「仕方ないですね。全部入れちゃいましょう」
「んぐぅうううううううう――!!!」

 3週間後――
「はふぅ…んぐぐ……ぷはぁ…ご…ごひゅじん……さまぁ……」
「ん? どうしたんですか?」
 椅子に座って文庫本を読んでいた僕は、股間に顔を埋めている“のーでんす”さんの髪を掴んで引き上げた。つい数週間前までは光り輝くように白く美しかった長髪は、今や血と汚物のマーブル模様に染色されている。
「……も、もふ……げんかひ…でふぅ……おねがひひまふぅ…うぐぐぅ……ださせ…へぇ……!!」
 口調が不明瞭でよく聞き取れないけど仕方ないかな。1週間以上もの間、彼女の小さな口には大き過ぎる僕の勃起したペニスを、一切休憩無しでフェラチオさせているんだから。もう顎もガタガタだろう。この姿勢のまま精液と糞尿を何リットル飲ませた事か。トイレに行かなくていいのは便利だけどね。
「だふぁせ…ふぇぇ…ださせ…へぇ……!!」
 どうやら、何か『出して欲しい』って言ってるらしいけど……金属の棒を組み合わせた、相手を土下座の姿勢で固定させる中世の拷問拘束具から開放して欲しいのかな? 確か、半日も着けたままにしておくと発狂するくらい苦しいらしいけど。
 それとも、アヌスに注入したゼリー状グリセリン浣腸液を排泄したいのかな? 10リットルも入れるとお腹がまるで妊婦みたいだね。アナル栓をしてから1週間以上経過しているから、ウンチと一緒に発酵している頃かな。

 その時――
「おねがひよ……いい子だからぁ…もう、やめまひょう……」
 “のーでんす”さんの苦痛に震える美貌に、今まで見た事の無い表情が宿った。
 それを見た――見てしまった僕の心の中に、ありえない“情感”が浮かぶ……
 ……そんな筈が無い。
 父子家庭で育ち、顔が似ているわけでもない、今まで写真でしか見た事の無い人を思い出すなんて、どうかしている。
 今、何か途方も無く間違った事をしているような……
 ……そんな筈は無い。
 そうだ……今はお口の奉仕が下手な“のーでんす””さんの為に、フェラの特訓をしているんだった。
「勝手にフェラを止めたらお仕置きだって言いましたよね? じゃあ2本目行きましょうか」
「!!…い、いひゃあ…! ごふぇんなふぁい! ごふぇんなふぁあぃい!!」
 再び恐怖に顔を引きつらせながら、血の滴る口で必死に奉仕を再開する“のーでんす”さんだけど、僕は容赦無くその顎を押さえて、目の前で医療用のペンチをカチカチと打ち鳴らせて見せた。
 いや、もちろん健康的な歯を引き抜くなんて残酷な事はしないよ。
「引き抜くのは親知らずだから大丈夫ですよ。まだ3本も残ってますし、小顔美人になれますよ」
「いひゃあああああああああ――!!!」
 泣き叫ぶ“のーでんす”さんの唇から、絶叫と共に鮮血と砕けた歯が滴り落ちたのは次の瞬間だった。

 3ヶ月後――
「……171…172…173……」
ストップウォッチに表示される数値を読み上げながら、僕は足元の巨大な水槽をつま先で蹴飛ばした。これは『そろそろ引き上げるぞ』という合図だ。まぁ、聞こえているとは思えないけど。
 水族館でしか目にできないような巨大な水槽には、ドロドロとした白濁液がが充満している。ちょっと半径100m以内には近付きたくない猛烈な悪臭が漂っているのは、この中身が全て男の精液――ザーメンだからだ。正直、僕もあまり傍に寄りたくないけど、ガマンして天井からぶら下がる鎖を掴んだ。そろそろ引き上げの準備だからね。
「……174…175…176……」
 この鎖は天井の滑車に繋がっていて、そこから折り返して水槽のザーメンの中に消えている。時間が来たら鎖を引けば、水槽の中の鎖に繋がった物も引き上げられるという仕組みだ。
「……177…178…179……」
 よし、もう時間だ。右手の鎖に力を込めて――
「……180!!」
 気合を込めて引っ張った。白い水面がゆっくりと盛り上がり、鎖に繋がれた“それ”が出てくる。初めは白い粘液の塊にしか見えなかったけど、粘性の高い白濁液が水面にボトボトと落ちるにしたがって、白い人型のシルエットと化した。確認するまでも無く、これは“のーでんす”さんだ。元々白い人だから、全身白濁液に染まってもあまり違和感は感じられないね。。

「んぶぅ…げふっ! ごほごほっ!! がはあぁ!!」
 全身からザーメンを滴らせてる“のーでんす”さんの表情は、ドロドログチョグチョの白濁液でよく見えないけど、とりあえず苦しそうなのは苦悶の喘ぎ声で分かる。
 調教が始まってから散々嬲られていた爆乳は、天井から伸びる鎖にぐるぐる巻きにされて、そこだけで吊るされた彼女の全体重を支えているので、白濁液の下からでも赤紫色に腫れ上がっているのが見える。でも、苦悶の原因はそれだけじゃない。
 数日前から、こうしてザーメンプールの中に3分間沈めては、、10秒間だけ息継ぎの為に引き上げるという、水責めならぬザーメン責めの拷問を繰り返している。スライム状の精液の所為でまともに息継ぎできなくて、酸欠の苦痛に発狂せんばかりに苦しんでいるけど、それも苦悶の理由の1つでしかない。
「あぐぐぐぅぅうううう……あがぁ!! だ、だずげ…でぇ……ごぼっ!!」
 クールな彼女がここまで悶絶しているのは、股間に突き刺さった三本のチューブの所為だろう。ヴァギナとアヌスと尿道に挿入されたチューブからは、毎分50リットルの勢いで周囲のザーメンが注入されて、子宮に腸に膀胱が破裂するギリ戯りの所で、今度は排泄させるという、強制浣腸と強制排泄を繰り返し強制されているのが、最大の理由だろう。今の“のーでんす”さんは、数十秒おきにカエルみたいにお腹を膨らませては、元の体型に戻るという、生きた風船と化していた。た。

 こうした一連の精液拷問は、彼女が先日、命令を完遂できなかった事への、いわばお仕置きだ。
 『全裸で正午の町を歩いて、遭遇した全ての『男』の精を、口と性器とアナルにそれぞれ1回ずつ出させて回収せよ』
 これが今回の命令だった。最近の調教としてはかなりお手軽な部類だけど、たまには彼女にも楽をさせないとね。案の定、命令の内容を伝えると“のーでんす”さんは大喜びしてくれたよ。泣きじゃくって僕の足にしがみ付くくらい。いつまで経っても僕の足から離れようとしないので、結局蹴り飛ばしながら町に送り出したけどね。
 性欲旺盛な中高生、不良やヤクザに輪姦されるのはまだマシな方だった。maだ精通も来てないだろう幼児や80を超えてそうな老人にまで股を開き、土下座しながら私を犯してくださいとお願いして、最後には無理矢理逆レイプする彼女の姿は本当に笑えたよ。
 大爆笑だったのは、上品そうな老婦人が散歩させていたチワワの雄にまで襲いかかって、犬のペニスにむしゃぶりついた事だった。結局、この事で警察を呼ばれて一悶着あった所為で、ノルマを達成できなったんだけどね。痴女として逮捕された神様なんて、“のーでんす”さんぐらいのものかな。
 ……さて、そろそろ10秒たった。また彼女をザーメン漬けにするとしよう。
「んぷはぁ…おねがいじまず!! おねがいじまず!! ゆるじでぐだざいぃ……」
 “のーでんす”さんの懇願は完全に無視する。彼女って照れ屋さんだから、こうして本心とは裏腹な事をつい言っちゃうんだよね。

 ……と、そこで僕は大事な事を思い出した。
「あ、これ付けるの忘れてました」
「あうぅ!!」
 乱雑に彼女の爆乳とお尻に点滴の針を突き刺す。繋がれたカテーテルの先には、薬液を入れる空のガラス容器があるんだけど……そこに、すくい取った白濁液を注ぎ入れた。
「ひっ! ひやあぁ!?」
 自分の血管に次々と注入される精液を見て、“のーでんす”さんが短い悲鳴を漏らす。
「どうせザーメン漬けにするんだから、身体の中からやった方が早いと思いまして」
「いやぁあああぶうぅぅ……」
 すぐに鎖を手から離したので、“のーでんす”さんの悲鳴はと中でザーメンプールの中に消えた。
 うーん、もうザーメンの匂いと成分が完全に彼女の身体に染みついちゃったから、人間を相手にするのは無理っぽいかな。今度から、隣町の競馬場の馬に相手させるとしよう。ノルマは1日千頭ってところかな。

 3年後――
「きゃううっ! いたい、いたぁい!! あははぁ……もっとぉ」
「ほらほら、ちゃんと大人しくしてください」
 涎を垂らしながら僕の股間にむしゃぶりつこうとする『雌豚』の身体を、タイル敷きの床の上に押さえ付けて、僕は彼女の“洗浄”を再開した。
 蝋燭の火傷、鞭の打傷、ロープの痕、ピアスの穴、その他様々な拷問の痕跡が、永久に消えない傷跡として刻まれた“のーでんす”さんの肢体は、それでも処女雪ののように白く、夢のように美しく、成熟した大人の色香を漂わせている。僕はその上に無造作に粉末洗剤をまぶし、
「ぎゃああああぅぅうううぁあああああ――!!!」
 サビ取り用の金属タワシで、渾身の力を込めて擦り出した。固い金属の牙が容赦無く彼女の白い肌をえぐり、擦過傷から真紅の血が溢れ出る。全身余す所無く金属タワシが這いまわり、“のーでんす”さんは絶叫をあげながらも、
「あぐぐぅう……もっと、もっとぉ! もっとイジめてくださいぃ!!」
 瞳を蕩けさせた歓喜の表情で、快楽の雄叫びも漏らしているんだ。
 うむむむむ、ちょっと調教が上手く行き過ぎたかな? 今や彼女は拷問以上の調教にも喜びの声を出すし、どんなに凶悪で恥ずかしい命令にも素直に従う。肉奴隷として完成しちゃったんだ。これからどうしようかなぁ……
「あはぁ…んぐぅうう……痛いぃ…いいのぉ……」
「こらこら、勝手に入れちゃダメだよ」
 ちょっと目を離した隙に、こうして自ら自ら便所ブラシをヴァギナとアナルアナルの中に挿入して、ゴシゴシ磨きながらオナニーするくらいだ。
「いう事聞かないなら、こうだ!」
 僕は彼女を浴槽の中に蹴り落とした。
「んぎゃああぁああううううううう!!!」
 たちまち絶叫が浴室に響き渡った。浴槽の中には、唐辛子の絞り汁とto食塩水のブレンドが60度の熱さで充満しているんだけど……
「あああぅうううっ!! 痛ぁづいぃぃ!! ぃいいっ! いいよぉ!!」
 赤熱の水飛沫の中でのた打ち回りながらも、彼女の声と美貌には歓喜の嬌声があった。その淫欲に狂った雌豚の姿に、かつての誇り高き『外なる神々』の面影は何処にも無かった。
 やれやれ、本格的ni次のステップを考えないと……

 その日の夜u――
「ほら、起きてください」
「んあぁ……? ごひゅじんさまぁ……」
 久しぶりの睡眠から叩き起こされた“のーでんす”さんは、僕の姿を見止めると、子犬のように足元へ擦り寄ろうとして――
「ぇ?……なに…これは……」
 ――自分の身体の惨状に気付いたようだ。
「ぃやあああああああああ――!?」
 いや、ちょっと寝ている間に身体を魔改造しましてね。
 只でさえバストサイズが100cmを超えてる乳房は、今や片方の乳房だけで直径が1mを超える大きさに肥大化して、直立しても乳房が膝ひざまで届く巨大な肉の塊になっている。形の良かった乳首もグろテスクに奇形化して、男のペニスよりも大きく勃起した乳首からは常時母乳がドクどくと溢れ出ていた。
「いやぁあああああぅぐうぅうう!?」
 改造された自分の乳房があまりにショックだったのだろう。狂ったように泣き叫ぶ“のーでんす”さんだけど、その超乳を無造作に蹴飛ばすと。、、たちまち悲鳴に快楽の嬌声が混じった。
 このふざけたサイズのち房は、性感を通常の千倍に調整してあるんだ。
「あふぅ! ひゃがぁああああっ!! だめぇ!! あうぅううぐぅううう!!」
 しばらく全体重をかけてぐりぐりと乳房を踏み躙る。そして、ビクビクと震えながら勃起する乳首を握り締めると――
「きゃあうぅ!!」
 まるでホースから水を撒くみたいに、母乳の噴水が天井にまで吹き出した。
「乳絞りしているみたいで面白いですね」
 左右の乳首を交互にしごき、絞り上げると母乳も交互に噴出して、僕と“ノーでんす”さんの身体を白く染めていく。母乳はヨーグルトみたいにkoくて、甘かった。
「あぐうぅぅ!! だめぇ!! やめてぇ!!」
「じゃあ、こっちの方をやりましょうか?」
「……えっ?」
「ああ、おっぱいが邪魔で見えないんですね」
 焦燥した美貌に疑問の影を浮かべた“のーでんす”さんの超乳を、よいしょっと気合を入れて左右に広げる。けっこう重労働だ。そして、乳房の谷から顔を見せたのは――

「きゃあああああああ――!?」
 絶叫が轟いた。
 まぁ、無理も無いかな。自分の股間から太さ15cm、長さ80cmの勃起きしたペニスが生えているのを目撃すれば、女なら悲鳴を上げない方がおかしいだろう。
「ちょっとクリトリスをペニスと交換させてもらいました。ふたなりってのもオツなものでしょう」
「ぁあああ……あああ……ああああっ!!」
 まだ興奮状態にある彼女を尻目に、、僕は両手で彼女のペニスを掴んだ。大き過ぎて、とても片手じゃしごけない。ちょっとシャフト部分を擦っただけで――
「ふひゃああああぐぅうううう!!!」
 ペニスの先端から、火山の爆発みたいな信じられない量の精液液が噴出する。初めての射精の感覚に、“のーでんす”さんは脳味噌が焼き付けた心地だろう。ペニスを掴む手を上下させる度に――いや、ペニスに触れているだけで、とめどなく白濁液を射精する“のーでんす”さんの姿は、その超乳も相俟ってまるで奇怪なオブジェのように――美しかった美しかった。
「今の貴方なら、こんな事もできるんですよ」
「ひゃぐうっ!!」
 僕は超乳の両乳首を掴んで左右に広げ、天天天を貫くペニスを乳房の谷間に足で押し込み、再び超乳の門をを閉じると、ペニスは亀頭だけを残して完全に乳房の中に隠れてしまった。そのまま乳首を交互に上下させると――
「うひゃあうぅぅ!! だめぇ!! らめぇええええ!!!」
「自分の胸で自分のペニスをパイズリできるなんて、すごいですねぇ」
 左右の超乳でゴシゴシ擦られた“のーでんす”さんの巨大ペニスが、yoり勢い良くザーメンを射精する。同時に勃起した乳首から母乳も噴出させた。
「あぶぶぅう!?」
 僕は白目をむいて痙攣しながら喘ぐ“のーでんす”さんの頭を摘むと、超乳の間から顔を出して射精を続けるペニスの亀頭を無理矢理咥えさせた。初めてのフェラの快感に爆発したた大量のザーメンが、直接喉の奥に注ぎ入れられる。
「んぶふぅぅうううう!!!」
「セルフフェラまでできるなんて、もう1人だけで何でも楽しめますね。羨ましいなぁ」
 自らの精液と母乳で溺れている“のーでんす”さんの異様な姿を見て、やはりこの人体改造プレイの方向性は正しかった事を悟った悟ったさとった――

 3世紀後――
 “のーでんす”さんは「んぐぶふうぅう」と喘ぎながらぼくのぺにすをくわえてあえいで、超乳tおぺにスから射精をどんどん射精しつづけてワンワンなきさけんでいるそれをみながら背中にむむを無を鞭をたくさんあびせました、。

「今度こそ間違いないわ!! ここが“つぁとぅぐあ”の接触者がいる空間よ!!」
「本当だろうな? その台詞はもう20回は聞いたぜ」
「う、うるさいわね」

お腹の中には大量の規寄生虫」野卵卵が入っているのde孵化してたく散出てきて妊婦みたいでででです 「んはぁああああ」となき差叫んで1ます面白い

「しかし、こうもあっさり人格乗っ取られるとは情けねぇ。御先祖様が泣くぜ」
「仕方、な、かろう。、『這、い寄、る混沌、』を、相手に、こ、こま、で自分、を維、持で、きるだけ、でも、大、したも、のだ」
「“うぼ=さすら”様の意見に同意しまス」

koんどは手足を切断し様かなそれとも内臓を取り出してチ塗れファックも良いな面白そうだな楽しそうだなあハハハハハハ助けてはハハハハハハは母は八はハハハハハハ歯は八派はh誰か母は八はハハハハハハハハハハハハ助けてハハハハハハハハハハハハー=〜

「“混沌化”は消せるか?」
「ん、“のーでんす”ちゃん専用にチューンナップされてるけど、なんとかしてみせるわ。この“うぼ=さすら”ちゃんに任せなさい♪」

 ハハハは八は歯は八八はハハハ八はハハハハハハハハハハtasuketeハハハハハ八八ハハハhhっはああああああっはっはハハハ八は

『それ』は、突然はじけた。
「うわぁああああああああああ――っ!?」
 むにょん
 ばね仕掛けの人形みたいな勢いで跳ね起きた僕を、何か柔らかいものが受け止める。
「目が覚めたか」
 しばらく、目の前に何があるのかわからなかった。暗闇から急に明るい場所に出た時と同じように、視界が白くハレーションを起こしてくらくらする。やがて、目の前にあるのは白い光源ではなく、汚れ1つ無い純白の白装束である事に気付いて――
「うわぁ!!」
 もう一度、僕は素っ頓狂な声をあげて高速後退りした。
「気をつけろ」
 へ?
 何かが背中に激突した衝撃に、慌てて振り返った僕は見たものは――
「こんなに早く会う事になるとは思わなかったがな」
 とにかく渋くて男臭いワイルドな中年男性――“脆木 薫”氏。
「なーんーでーぇ、あの食っちゃ寝旧支配者の信者を助けなきゃいけないのよぉ!?」
 ミニスカサンタで全身タイツなヘラジカ美少女――“いほうんでー”さん。
「それ、が、古よ、りの契、約だ、」
 裸身にボンデージファッションのように包帯を巻いた血涙の美女――“るりむ・しゃいこーす”さん。
「御無事のようで何よりでス」
 “しょごす”さんにそっくりな和服にエプロンドレスの――“和風しょごす”さん。
「姉さんのダンナ様を、見捨てるわけにもいかないしね♪」
 灰色のゴスロリドレスの金髪ショートカットの美幼女――“うぼ=さすら”さん。
 あの時の襲撃者達が、再び僕の前に現れたんだ。

 脆木氏1人ならともかく、物騒な神様も連れて来ているので、思わず身構える僕の肩を、
「やめなさい。そなたを混沌の呪縛から解放したのは彼奴等だ」
 “のーでんす”さんの白い手が、そっと止めてくれた。なぜか、あの翁面は付けてなくて、魂が蕩けそうな美貌を晒している。
 彼女の話によると、“ブラックメイド”さんに魔改造された僕は、自分自身が“混沌化”の媒体とされて、“のーでんす”さんを封じ込めるために操られていたらしい……
……いや、洗脳されていたので全然覚えていないけど。
 このまま僕は“のーでんす”さんと一緒に混沌の渦に飲まれて破滅する所だったんだけど、ギリギリの所で脆木氏達が助けてくれたそうだ。その事について脆木氏にお礼を言うと、
「気にするな。これも先祖からの伝言だ……もっとも、これに関しては実行するかどうかは、俺の自己判断にまかせると言い伝えられたがな」
「え?」
「気にするなと言っただろう」
 相変わらず、脆木氏は脆木氏だった。男が惚れるタイプって言うのかな。カッコイイ。

 あ、そういえば……僕は“のーでんす”さんに向き直った。
「……ところで、洗脳されていた僕って、何か変なことしませんでし――」
「な、何もしていない。詮索無用だ!」
 ちょっと彼女のイメージとはズレた仕草で、僕の疑問はぴしゃりと封じられてしまった。な、何か変な事でもしちゃったのかな?
「えへへ〜♪ あのね、“のーでんす”ちゃんったらねぇ……きゃあ!!」
 ニマ〜っと子悪魔チックに目元を綻ばせて、何か言おうとした“うぼ=さすら”さんは、“のーでんす”さんが振った扇子に吹き飛ばされて、壁にびたーんと貼り付いてしまった。
「……えーと、本当に何もなかったんですか?」
「詮索無用だ! 忘れろ!」
 妙にドギマギしている“のーでんす”さんを見ると、とてもそうとは思えない。
「そ、そなたがした事も私が受け入れた事も、全ては“ブラックメイド”が悪いのだ。うん、間違いない!!」
「ちょ、ちょっと落ちついてください」
 僕は動揺しまくっている“のーでんす”さんを落ちつかせるために、その肩を軽く押さえた。
「あっ……」
 ただそれだけなのに、“のーでんす”さんは腰からふにゃふにゃと崩れ落ちて、僕の下半身にしがみついては、
「……さまぁ」
 なぜか陶酔した表情で、僕の股間に頬擦りしたんだ……って、
「“のーでんす”さん!?」
「……はっ!? い、いや、何でもない。すまぬ。どうやら“混沌化”の影響が抜け切っていないらしい」
 咳払いしつつ僕から離れて、あの翁面を付けながら立ち上がった時には、もう僕の良く知る“のーでんす”さんの姿形を取り戻していた。
「さて、夫婦漫才はそこまでにして……そろそろここから抜け出さないか?」
 ぶっきらぼうに煙草に火を点ける脆木氏の意見は、とても建設的なものだった。一見、僕の自室に見えるこの空間も、窓の外の風景を見れば、異世界の一部である事が一目瞭然だ。
「私にまかせろ。あのヘッポコが作った世界など、すぐに抜け出せ――」
「ヘッポコ言うなニャルラ!!」

 僕達が凍り付いたのは、その発言の内容ではなく、その台詞が想像もできない人物から発せられたからだ。
 脆木氏――彼にとっても本意ではないらしく、驚愕の表情で自分の口を押さえている。それなのに――
「よくもよくも私の邪魔をしてくれたニャルラ!! もう怒ったのニャルラ!!」
 あのマヌケな甲高い女声は、明らかに脆木氏が喋っているんだ!!
「いけない!!」
「やめてぇ!!」
 周りの邪神の皆様が、血相を変えて脆木氏に殺到する。しかし――
「バイバイ♪ ニャルラ〜♪」
 絶叫と鮮血は同時に噴出した。
 ――聖書によると、女は男の肋骨から生まれたらしい。心臓や肝臓、胃袋という説もあるとか。
 この光景は、『それ』の再現なのかもしれない。
 仰け反る脆木氏の胸を内側から突き破り、血と肉片を撒き散らしながら出現したのは――黒き無貌のメイド!!
「“ブラックメイド”ならぬ、“ブラッドメイド”ニャルラ〜」
 言葉通り、血塗れの“ブラックメイド”さんは、えっへんと無い胸を反らして、ビクビクと痙攣しながら床に崩れ落ちた脆木氏の傍に降り立った。
「脆木!!」
「御主人様ァ!!」
 絶叫しつつ脆木氏の元に駆け寄ろうとする“いほうんでー”さんと“和風しょごす”さんを、
「無、駄……、も、う致、命傷だ、」
 “るりむ・しゃいこーす”さんの包帯が押し止めた。
 “うぼ=さすら”さんと“のーでんす”さんが、苦渋の表情で“ブラックメイド”さんの前に立ちはだかる。
「相変わらず趣味が悪いわねっ!!」
「お褒めに預かり光栄ニャルラ〜」
 “ブラックメイド”さんはニヤリと嘲笑すると、慇懃無礼に頭を下げた。
「勝ち誇っていられるのも今のうちだ」
 “のーでんす”さんの扇子が、バッと乾いた音を立てて開いた。
「どうせ貴様のヘッポコな陰謀など、いつものように無様に頓挫するのだからな」
「陰謀が……頓挫したニャルラ?」

 ぴしり

 その瞬間――異変がおきた。
 初めはその異変に気付かなかった。ほんの些細な変化だったからだ。
 “ブラックメイド”さんの黒い顔に、ひび割れが走るのを些細な変化と言えるならば。
「私の陰謀が頓挫した事など、1度もないニャルラよ。向こうは勝ったと勝手に思っているかもしれないけどニャルラ」

 ぴしり……ぴしり……

 ひび割れは徐々に広がっていく。まるで、“ブラックメイド”さん自身の身体を侵蝕するように。
「私は様々な異世界で様々な陰謀を企み、そして陰謀を粉砕されてきたニャルラ……しかし、それが『本当の目的』の為の伏線に過ぎなかったとしたら? 私の敗北すらも、計画の中に含まれているとしたら?」

 ぴしり……ぴしぴし……ぴしぴしぴしぴし……ぱりん!
 ひび割れは今や全身に広がり、その身体が見る間に崩壊していく。
 そして、その中から『彼女達』の姿が――

「考えてもみなさいな。どう油断すればライオンがナメクジに負けると思う?」

「邪神の陰謀が」

「本当に人間ごときに」

「止められるとでも思っているの?」

 かしゃあああああん!!!

 黒き神は砕け散り――
「うふふふ」
「くすくす」
「あははは」
 ――黒き神が誕生する。
「お前達は……新たな『化身』か!!」
 “のーでんす”さんが緊張の気をまとって身構える。
 新たな黒き神――それは最初、燃える三つの目を持った怪物に見えた。しかし、次の瞬間には燃える瞳は三つに分かれて――
――悪夢の中でしか見られない、究極の美を誇る3体の少女達と化したんだ。ゴシックロリータ風の黒いドレスも、眼帯で片目を隠しているのも、残された単眼が放つ真紅の輝きも、唇に貼り付いた嘲笑も、全てが同じ――唯一、眼帯の形状の違いだけが、3人を区別していた。
「もう」
「あの姿は」
「飽きちゃったから」
 黒き少女達は自分のスカートの両端を軽く持ち上げ、優雅に一礼した。コピーしたように全く同じタイミングで。
「わたしは“ラト”」
「わたしも“ラト”」
「わたしだって“ラト”」
 そう自己紹介して、黒き神の少女――“ラト”は鈴が鳴るように笑った。嘲笑だった。
「それが新たな『化身』の名か……相変わらず安直だな」
「だって」
「それが」
「お約束だもん」
「気をつけろ……もう、奴はヘッポコな“ブラックメイド”ではないぞ」
 “のーでんす”さんに言われるまでもない。無邪気に微笑む“ラト”達の姿に、僕は底知れぬ恐怖を味わっていた。それは、今まで遭遇してきたあらゆる邪神の恐怖の中でも、間違いなく最大のものだった。3人の赤い単眼が――黒い魔獣の燃える三ツ目に見える。

「異世界における全ての陰謀は、本当の目的の為の伏線に過ぎないと言ったな……ならば、この世界における貴様の陰謀、『“■ざとー■”復活』も、伏線に過ぎないというのか?」
「“■ざとーす”復活?」
「“あざ■ーす”復活?」
「“あざとー■”復活?」
 “のーでんす”さんの言葉に、“ラト”は一斉に首を傾げて――
――そして、次に言った言葉を、僕は永遠に忘れる事はなかった。
 告白すれば、僕にその発言の意味はさっぱりわからない。でも、それなのに、“ラト”が何かとてつもない言葉を、決してありえない言葉を言った……
……それだけは理解できたんだ。

「“あざとーす”なんて」

「もう、いらない」

「もっといいものを見つけたの」

 沈黙――とは、少し違うと思う。
 『世界が静止した』……そんな抽象的な表現が、この場合は適切かもしれない。
 それほどの意味が、その言葉には込められていた。
「“■■■■■”が……もう必要無いだと!? どういう意味だ!!!」
 あの“のーでんす”さんですら、動揺しながら激昂している。他の神様達ですら、唖然としているようだった。
 僕なんてちっぽけな存在は、ただ道端の石ころの様に佇むだけだ。
「それはもう始まっているの」
「そう遠くないうちに」
「明らかになるよ」
 “ラト”の黒い姿が、黒く滲んでいく。
「その時、皆は知るんだよ」
「この物語が、この神話が」
「アザトース神話とも」
「ヨグ=ソトース神話とも」
「ニャルラトテップ神話とも呼ばれる事無く」
「“―――神話”と呼ばれる真の理由を――!!」
 その黒い滲みが、僕の部屋の押入れにあるン・カイへと続く黒い靄と同じだと気付き、そして、その意味に愕然とした時――
「うふふふ」
「くすくす」
「あははは」
 『這い寄る混沌』“ラト”の姿は、闇の中に消え去っていた……

「御主人様!! 御主人様ァ!!」
「ねぇ! アンタなら傷を治せるんでしょ!! 早くしてよぉ!!!」
「……ごめん。これは私にも無理なの」
「『、這い寄、る混沌、』、の与、えた傷、だ。無理だろ、うな、」
 彼女達の必死の声が耳に届いて、ようやく僕は我に帰った。先刻までの衝撃的な出来事に、しばらく放心していたんだ。
「脆木さん!!」
 脆木氏を囲む彼女達の間に、僕も加わる。“るりむ・しゃいこーす”さんが巻いたらしい包帯越しにも見える、胸の内側で爆弾が破裂したような無残な傷は、赤子が見ても致命傷だと判断するだろう。ひゅぅひゅぅと吐く細い息が、徐々に小さく短くなっていくのがわかった。
「……こうなる…事は……わかっていたんだ…が……ドジったぜ……」
「喋ってはいけませン!!」
 “和風しょごす”さんが涙を流しながら傷口に手を当てる。けど、もう……
「ごめんなさい……僕を助けようとしなければ、こんな事には……」
「気に……ごふっ……すんな…」
 真っ赤な泡を苦しそうに吐きながら、しかしそれでも脆木氏は男臭く唇を歪ませる。
「先祖からの……うぅ……言い伝えには……この事も…含まれていた……
……当初は……助ける気なんて…グッ…なかったぜ」
「じゃあ、なぜ!?」
「……そんな…ごふっ…顔するな……“のーでんす”神に……“はすたー”神の……
……潜伏場所を…ぐうぅ……教えたのは……俺……なんだ…ぜ」
「――っ!!」

 それから脆木氏は弱々しく、しかし明瞭に語り始めた。止められる雰囲気ではなく、止める意味もなかった。
 “はすたー”さんの潜伏場所をリークする事と引き換えに、“いほうんでー”さん達は封印しないように“のーでんす”さんに頼んでいた事――
 しかし、結局は“のーでんす”のターゲットに自分の『接触神』は含まれていなかったので、リークは無意味に終わった事――
 そうなると、“ブラックメイド”の“混沌化”の方が脅威となる。“ブラックメイド”と対抗する為には、僕と一緒に“混沌化”の罠に陥った“のーでんす”さんを助ける必要があったという事――
 そうすれば、自分が死ぬと祖先からの言い伝えには警告されていたにもかかわらず……
「……俺は…自分のオンナを…ぐぅっ…守れれば…それで……よかった……
……アンタが死のうが……自分が…死のうがな……」
「脆木さん……」
 もう、ほとんど呟きにも聞こえない弱々しい声なのに、彼の言葉一言一言が、自分の心に突き刺さるのを感じた。
「…がはっ!……いいか…自分の…ぐぅ…オンナを…守る……のは……男の…義務で…本懐だ……
……げほっ!……その為なら…どんな事を…しても……たとえ…世界が……滅亡しても……
……お前も……男なら…理解できる……はずだ……」
 そして、最後にはっきりとした声で――
「お前も男なら、自分の女の為に生きてみろ」
 ごぼり、と大きな血の塊を吐き出して、脆木 薫氏の命は終わった……

「御主人様ぁぁァ!! ゴシュジンサマァアアアア!!!」
「……死ねなんて……あたしは命令した覚えはないわよ……バカっ!」
「こ、れも、さ、だめ、だ」
「……いつ見ても慣れないのよね。こーゆーの……」
 うめき声1つ出せずに、ただ呆然と座り込む僕の前を、
脆木氏の遺体を抱いた“いほうんでー”さん、
“和風しょごす”さん、
“るりむ・しゃいこーす”さん、
“うぼ=さすら”さんが通り過ぎていく。
何か僕に話しかけたような気もするけど、ほとんど耳には届かなかった。
 脆木氏が死んだ事への驚愕と悲しみ。『邪神』と接触した者に待ち受ける運命の予兆。彼を動かしていた先祖の言い伝えと、その背後にいるという“魔道師エイボン”――
 様々な感情と情報が入り乱れて、頭の中が混沌の渦のようだ。
 脆木氏の遺体と四柱の接触神がこの世界からいなくなっても、僕は動けずにいた。
「そなたも、元の世界に帰るが良い」
 静かで優しい声が、僕の背中にかけられるまでは。

 ゆっくりと振り向いた先には、仮面を外した“のーでんす”さんの微笑があった。限りない慈愛に満ちた。優しく。そして強い。
「その扉から出れば、そなたは元の世界に戻れる。もはや邪神を狩る気はない。今更“はすたー”達を封印しても無意味のようだからな。そなたはその命が尽きるまで、好きなように生きるがいい」
「……“のーでんす”さんは、これからどうするのですか?」
「“ラト”と――『這い寄る混沌』と決着をつける」
 静かに、そして力強く“のーでんす”さんは言い切った。その瞳に宿る力強い意思。そして限りない慈愛……彼女が邪神と戦う時、仮面を付けている理由がわかった気がした。
「またいつか、会う事もあろう……さらばだ」
 『大いなる深淵の大帝』の――“のーでんす”さんの姿が消えていく。彼女は、なぜあんな強大な敵に立ち向かう事ができるのか。なぜ、世界の為に戦う事ができるのか。なぜ――己を滅茶苦茶に陵辱した相手に、そんな笑顔を向けることができるのか。
 そんな彼女に――
 優しい彼女に――
 強い彼女に――
 誇り高き彼女に――
 微笑む彼女に――
 ――僕は、あるイメージを想像した。そして、自分でも理由がわからないまま、自然にその言葉が口から出たんだ。

「おかあさん……!」

 “のーでんす”さんは、ほんの少しだけきょとんとした後、目元を優しく綻ばせて――夢のように消え去った……

 ……元の世界に戻ってからの僕の生活は――ある意味、予想外な事に――今までの生活と何も変わらなかった。“はすたー”さんも、“ばいあくへー”さん達を連れてハリ湖とやらに帰っていったし。
 まぁ、“つぁとぅぐあ”さんに供物を捧げに行く度に、1人居残った“ばいあくへー”さんと“つぁとぅぐあ”さんとの微妙なバトルを見る破目になったのが、些細な変化かもしれない。
 “う゛ぉるばどす”さんと“がたのそあ”さんは、ン・カイに居候を続けている。自分の住処に“混沌化”の影響が無くなるまで居着くらしいけど、戻れるのは何時になる事やら……
 僕は今までと同じように、“つぁとぅぐあ”さんに供物を捧げ、“てぃんだろす”と遊び、“しょごす”さんの料理を食べ、“いたくぁ”さんにお茶を強奪されるという、のほほんとした平和な日常を過ごしていた。

 ……“それ”を目撃するまでは。

「こ、これは……」
 いつものようにン・カイに向かおうとしていた僕は、押入れの中で心臓を氷の手で握り締められる感覚を味わっていた。
 暗黒世界ン・カイへの扉が――あの黒い靄が――薄れている!?

 続く


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