『ひでぼんの書』

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第2部第2話

 ぴんぽーん
 その日の出来事は、このチャイムの音から始まった。
 ぴんぽーん ぴんぽーん ぴんぽーん ぴんぽーん……
 ……うるさいなぁ、子供の悪戯だろうか?
とにかく、今は締め切り間近で切羽詰っているのだから、こういう事はホントにやめて欲しい。
「私が応対しまス」
 ちょうどお茶を持ってきてくれた“しょごす”さんが、まだチャイムが鳴り続けている玄関を横目で見ながら傾いてくれた。
「えーと、悪戯でも穏便に済ましてくださいね」
「了解しましタ。ちょっと精神的外傷を与えるだけにしまス」
「……まぁ、穏便にお願いします」
 頬に手を当ててニコニコ糸目を綻ばせながら、“しょごす”さんは音も無く自室から出ていった。あの人は時折ムチャな事をするからなぁ……まぁ、彼女ならどんな押し売りが来ても大丈夫だろうけど。
「わぉん」
 パソコンの前で画面とにらめっこしている僕の膝の上に頭を乗せて、うたた寝していた“てぃんだろす”の声にふと我に返ると、
「…………」
 例によって、いつのまにか僕の部屋にいる“いたくぁ”さんが、せっかく煎れてくれた僕のお茶を勝手にすすっていたりする。この人――じゃなくて神様はまったく……やっぱりアナル地獄でお仕置きしかないかな。
「きャー!!」
 その時――絹を裂くような不定形乙女の悲鳴が、玄関から鳴り響いた。

「わぅ!?」
 “てぃんだろす”がばっと跳ね起きて、
「……上から読んでもやまもとやま……下から読んだらまやともまや……」
 意味不明な台詞を呟きながら、“いたくぁ”さんもゆっくりと腰を上げる。
 僕も慌てて飛び起きた。
 あの悲鳴は、間違いなく“しょごす”さんだ。先日、龍田川さんとの遭遇を思い出し、僕の背筋は凍りついた。
 まさか……あの連中が襲撃に!?
「“しょごす”さん!!」
 血相を変えて玄関に飛び出した僕達――しかし、そこで僕達は予想外の光景を目撃したんだ。
「……ごごごごごゴ、御主人様!!」
 廊下の隅でガタガタ震えていた“しょごす”さんが、必死に僕の足にしがみつく。
「まさカ……まさカ……あの御方ガ!!」
 そして、震える指先が指し示した方には――
「ふん、じんこうせいめいたいごときに、よをとめられるとおもうたか」
 高慢かつ小生意気そうに口元を歪めた、ロリロリでチビチビでふにふにぷにぷにな、息が止まるくらい戦慄的に可愛らしい子供が、玄関先で仁王立ちしていたんだ。どこをどうすれば、こんなに美しい子供が出来るのか。角度によって微妙に色彩を変える虹色の髪に、同じ色の瞳。張りと柔らかさを両立させた美肌は、『若さ』という言葉を最上の形で具現したようだ。外見年齢は10歳にも満たないけど、年齢とは関係なく、あまりに綺麗過ぎて男か女か判別が難しかった。たぶん男性だとは思うけど……
 まるで修行僧みたいな袈裟を着て、頭には奇妙な形のト巾、手には錫杖を持っている。そんな場違いな姿も逆にミスマッチになって、この子の美しさを際立たせていた。

「おぬしが、このやかたのしゅじんかや」
 舌っ足らずな声に呼びかけられて、僕はようやく意識を現実世界に戻せた。いけないいけない。どうやらあの子の可愛さに見惚れていたらしい。目頭を軽くマッサージして、僕は気を取り直した。
「えーと、一応は僕がこの家主だけど」
「なのるがよい」
「はぁ、赤松 英だよ。渾名はひでぼん」
「うむ、ひでぼんどのか」
 傲慢不遜に傾く少年(少女?)だけど、その仕草の愛らしさが生意気さを完全に打ち消している。単純な美しさなら、僕が今まで遭遇してきた『邪神』の皆さんにも引けを取らないだろう。
 でも、この子には『邪神』の皆さん特有の、“神の威厳”とでも言うべき迫力や威圧感は何も感じられなかった。美しさを別とすれば、普通の人間と何も変わらない雰囲気だ。どうやら、この子は『邪神』の類ではないらしい。
 ……あれ? 僕は過去にも、そんな雰囲気を持った存在に出会った事があったような……
「よのなまえは“よぐ=そとーす”。わがつまのことではなしがあるのだ」

「まぁ、とりあえずお茶でも」
「うむ、よきにはからえ」
 3人は楽に座れるソファーを1人占めしながら、“よぐ=そとーす”君は思いっきり偉そうに踏ん反り返った。
 何だかよくわからないけど、子供が1人で出歩いていてはいけないと思うので、とりあえず家の中に入れてあげる事にしたんだ。ここに何か用があるみたいだし、あの可愛らしさではいつ誘拐されるかわからないし……この状況が微妙にそれっぽいけど。
「……御主人様スゴイでス! あの『門にして鍵』を前にしテ、ここまで堂々とされているなんテ!!」
 カタカタ震えながらお茶を運んでくれた“しょごす”さんは、なぜか僕をキラキラした瞳で拝みながら感動していたりする。いや、どう見ても相手はただの子供なんだけど。
 ちなみに、“いたくぁ”さんと“てぃんだろす”は、居間に上がり込んだ“よぐ=そとーす”君の姿を見た瞬間、血相を変えてダッシュで二階に逃げてしまった。うーん、みんなどうしたんだろう?
「えーと、とりあえずお家はどこにあるのかな。電話番号か住所を教えてくれると手っ取り早いんだけど」
 “しょごす”さんが煎れてくれたコーヒーをすすりながら、僕は“よぐ=そとーす”君に尋ねた。流石は“しょごす”さん。豆の挽き方もお湯のタイミングも完璧だ。
 ……ちなみに、この質問はあくまでこの子の親御さんに連絡して、来てもらうなり送り届けるなりする為のものだよ。何か字面だけじゃホントに誘拐しているみたいだからなぁ。とほほ。
「そんなことはどうでもいいのだ。それよりも、よのつまのけんではなしがある」
 じろり、と厳粛そうなくりくりの瞳で僕を睨んだ“よぐ=そとーす”君は、一口コーヒーをすすると――
「んぐぅ!? に、に、にがいよぉ!!」
 いきなり激しくむせかえって、涙目になりながら吐き出してしまった。
 慌てて“しょごす”さんが布巾を取り出して、コーヒーまみれになった床とテーブル、それによぐ君の袈裟を丁寧に拭き取る。

「なんだこれは!? ココアじゃないではないか!!」
「えーと、ミルクコーヒーだよね、それ?」
「申し訳ありませン、かなり薄めたつもりでしたガ」
 確かに、テーブルに飛び散ったミルクコーヒーの色は、ほとんど真っ白だ。
「こんなにがいのみものを、よがのめるわけがないではないか!!」
 “よぐ=そとーす”君は、それが当然だとばかりに憤慨している。
「……ミルクと砂糖を10倍増しで、お代わり持って来て下さい」
「かしこまりましタ」
 あの子の口調や態度は高慢で大人びているけど、どうやら中身は見た目通りのお子様らしい。
「“てぃんだろす”でさえ、あのミルクコーヒーは飲めるのになぁ」
「なにかもうしたか?」
「いや、何でも」
「とにかく、はなしをすすめるぞ……」
 家族に連絡するから、という僕の話は完全にスルーされて、“よぐ=そとーす”君は一方的に喋り始めた。
 その内容を要約すると、つい先日、この近所で“よぐ=そとーす”君の奥さんの力を感じたらしい。まぁ、いくらなんでもあの歳で奥さんはありえないから、お母さんか何かの間違いだと思うけど。
 何でも、その奥さんとやらはかなりの浮気者で、よく旦那さんの元から抜け出しては、若いツバメを食い漁っているとか。それで今回も奥さんが浮気したのかもしれないと思って、この近所を捜索していた所、この家から奥さんの匂いを感じたんだそうだ。
 はぁ……何だか突っ込み所がありすぎて、逆に子供の空想とも思えないなぁ。

「……で、その奥さんのお名前は?」
 で、僕がこう切り出したのは、この子のお母さんの名前が分かれば、連絡先とかも判明するかもしれなかったからだ。でも、その答えを聞いて――
「よのつまのなまえか?『千の仔を孕みし森の黒山羊』こと“しゅぶ=にぐらす”であるぞ」
「ぶーっ!?」
 今度は僕が飲みかけのコーヒーを吹き出してしまった。
「うわぁ!! おぬし、なにをするのだ!?」
 テーブルを挟んで正面にいた“よぐ=そとーす”君は、当然それを頭から浴びせられちゃった。ゴメンね。
 いや、そんな事を気にしている場合じゃない。
 “しゅぶ=にぐらす”
 その名前はよく知っている。っていうか忘れるわけがない。あの妖艶な妙齢の美女との逢瀬は、僕の心の中に最上級のエロエロな思い出として、しっかり刻み込まれているんだから。
 おそらく、“よぐ=そとーす”君は“しゅぶ=にぐらす”奥さんの息子さんなんだろう。という事は……やっぱりこの子も『邪神』の人!?
「とにかく、よのつまがこのあたりにきていたのはたしかなのだ。おぬし、わがつまにあったことはないか?」
「いや〜、べつに〜、僕はなにも〜、知りませんね〜」
「なぜ、めをそらすのだ」
 あああああ、これはマズイ、まず過ぎる。ここで僕が“しゅぶ=にぐらす”奥さんと思いっきり浮気な事をしていたとバレたら、“あとらっく=なちゃ”さんが言う所の、『邪神』の皆さんにとっては美味しい獲物である僕は、本当にひとたまりもなく食べられてしまうだろう。
「やはりおぬし、なにかしっておるようだな」
 なぜか“しょごす”さんは妙にこの子に怯えているし、“てぃんだろす”は二階に避難している。“いたくぁ”さんは、どーせ僕を見捨てるだろう。絶体絶命のピンチだ。助けて! “つぁとぅぐあ”さぁん!!
 その時――意外な所から救いの手は差し伸べられたんだ。

「わ、わぅん」
 ぎし、ぎしと妙に階段を軋ませながら、二階から降りて来たのは……両手いっぱいにゲームやら漫画やらカードやらおもちゃやらを抱えている“てぃんだろす”だった。
「わぉん!」
 そして、何事か? と目を丸くしている“よぐ=そとーす”君の目の前に、そのおもちゃの山をどっさり積み上げて見せたんだ。
「な、なんだおぬしは?」
「わん、わわん!!」
 “てぃんだろす”は“よぐ=そとーす”君の座るソファーに飛び乗って、太陽みたいな笑みを浮かべながら、尻尾をぱたぱた振っている。どうやら、“てぃんだろす”は“よぐ=そとーす”君と遊びたいみたいだ。あの子には同年代の友達がいないからなぁ、やっぱり内心少しは寂しかったんだろう。
 友達がいないのは、四六時中僕に張りついている所為もあるけど、以前、近所の公園に遊びに行った際、評判の悪ガキ達に耳や尻尾を引っ張られたりして苛められて、きゃんきゃん泣きながら帰ってきた事もあった。やっぱり、人外の存在と人間が交流するには、何かと問題が多いらしい。
 ……ただ、その日以来、悪ガキ達の姿をぷっつり見かけなくなったのは何故だろう? 恐いからあまり考えないようにしているけど。
「あぉん、わん、きゃううん」
「なに? よといっしょにあそぼうだと? なにをもうすかぶれいものめ。あらゆるじくうかんのけしんたる、よがそんなこどもっぽいあそびなんて……」
 口ではそう言ってるけど、“よぐ=そとーす”君の視線はおもちゃに釘付けになっていたりする。
「わぅん、わわん、わん!」
「ううむ……そこまでいうのならしかたがない。よがじきじきにあそびあいてをしてやろうぞ」
 きっぱり、そう言い切ると、“よぐ=そとーす”君と“てぃんだろす”は、待ち切れなかったようにおもちゃの山に飛び付いた。やっぱり子供じゃないか。
 うーん、よくわからないけど、とにかくこの場は誤魔化せたみたいだ。よかったよかった。

「ううう、この! えいっ!」
「わぉん! きゃん!!」
 仲良くテレビの前に張りついて、フライングパワーディスクの対戦に夢中になっている2人を見て、僕は安堵の息を吐いた。やっぱりあの子は見た目通りの子供みたいだ。あまり心配しなくてもいいかも……
「……心配しても……オラオラ……じゃなくて……無駄無駄……」
「うわっ」
 唐突な背後からの無感情な声に振り向くと、例によって無表情にお茶を飲んでいる“いたくぁ”さんの姿があった。
「何が無駄なんですか?」
「……あの御方は……我等『邪神』の中でも……究極の存在の一柱……
……全ての時間と空間の……化身でもある……逃れる事は出来ない……絶対に……」
 何だかスケールの大きいことを言ってるけど……
「わん、あおぉん!」
「うわぁ!! またほうでんこうげきがぼうはつしてしまったぞ」
 ああして“てぃんだろす”とザ・グレイトラグタイムショーの2Pプレイで一喜一憂している姿を見ると、とてもそんな超高位存在とは思えない。やはり“いたくぁ”さんのハッタリなんだろう。
「……しくしく……信じてもらえない……」
 日頃の信用って大事なんですよ、“いたくぁ”さん。
「わん、わわん」
 ――と、急に“てぃんだろす”がゲームを中断すると、台所にとててててと走り去ってしまった。何事か? と思ったら、お盆にジュースやらミルクやらのビンを乗せて、えっちらおっちら運んできた。
 “しょごす”さんに頼る事なく、お客さんに飲み物を運ぶなんて、“てぃんだろす”はやっぱり良い子だなぁ。最近の僕なんて、そうした事は“しょごす”さんに頼りっぱなしだし。
 まぁ、実際はこういう事は意識的に“しょごす”さんに任せないと、彼女は『メイドの仕事を取らないで下さイ!!』って怒るし。
 とにかく、今の内に警察にでも連絡しようか。“しゅぶ=にぐらす”さんへの連絡方法がわかれば、それが一番良いんだけど……

 ――その時、
「わおぉぉぉぉおぉぉぉん!!」
「わはははは……これはおいしいのう!!」
 突然、陽気な雄叫びと笑い声が居間に轟いた。何事か? と思ったら、ついさっきまで2人でウルフファングの2Pプレイを楽しんでいた筈の“てぃんだろす”と“よぐ=そとーす”君が、茶色いボトルを飲み交わしながら、陽気に騒いでいるじゃないか。元気なのは大変結構だけど、この唐突な乱痴気騒ぎは一体?
「御主人様、あのボトルハ!!」
 “しょごす”さんの声に導かれて、2人がケラケラ笑いながら飲んでるボトルをよく見てみると……
「あ、あれはミルクはミルクでも、カルアミルクじゃないか!!」
 シロップみたいに甘いから、子供はジュースと間違えても無理はないけど、実は結構アルコール度数が高い、れっきとしたお酒なんだ。
 子供にこれは、いくらなんでもマズイと、慌てて僕は2人を止めようとしたんだけど……
 どんっ!
「ッ!?」
 2人に手を差し延ばそうとした瞬間、僕の全身に激痛と衝撃が走った。まるで、固い壁に正面衝突したみたいに。
「え、これは?」
 もちろん、居間の真ん中にいきなり壁が出現する筈はない。目の前の風景には何も変化は無かった。でも、恐る恐る手を伸ばすと、確かに指がぺたりと潰れて、目に見えない壁の感触を伝えている。
「これは次元障壁でス。突破する方法はありませン」
 “しょごす”さんの声も、少し慌てているみたいだった。
 うーん、このまま未成年飲酒行為を見逃すわけにはいかないよなぁ……あ、人間じゃないからいいのかな?
「わぉ〜〜〜ん!!」
「じゃまするでない……ひっく」
 そんな僕の心配を余所に、2人はすっかり上機嫌だ。完全に酔っ払ってる。

「あうぅぅ……いいきぶんなのだ……」
 ぽわん、と顔を上気させながら、“よぐ=そとーす”君はカルアミルクの瓶をあおった。小さな口では飲み切れなかった分が口元からこぼれて、その端正な顔を白く染める。その背徳的な美しさに、正直僕はドキリとした。
 ところが、ぽーっとそれを見ていた“てぃんだろす”は、
「くぅ〜〜〜ん」
 少し妖しく微笑みながら、“よぐ=そとーす”君の口元から垂れるカルアミルクを、舌でぺろぺろぺろりと舐め取ったんだ。
「うわぁ……なにをするのだぁ……」
 “よぐ=そとーす”君の抵抗は口だけだった。構わず“てぃんだろす”は彼の唇をぺろぺろ舐める。
「むぅ……おかえしなのだぁ」
 今度は“よぐ=そとーす”君が“てぃんだろす”の小さな唇を舐め始めた。お互いに口元を舐め合う2人は、やがて舌同士を絡め合って、ピチャピチャと唾液の混ざり合う卑猥な音を、部屋中に響かせていた。
「くうぅぅん」
「んはぁ……はぁ、そなたもあまくて……おいしいぞ」
 上気した顔で唇を合わせる2人は、どちらともなく絡み合う舌にカルアミルクを注ぎ垂らした。繋がった舌からねっとりと垂れ落ちた白濁の液体が、“よぐ=そとーす”君の袈裟と、“てぃんだろす”のTシャツを白く汚す。
「あぉん、わおぉぉん」
「あああ……もったいないのだぁ」
 今度は互いの首元を舐め取り始めた。無論、それだけで終わる訳がなく、正面に向き合って相手の身体に舌を這わせながら、“よぐ=そとーす”君は“てぃんだろす”の服を、“てぃんだろす”は“よぐ=そとーす”君の服を、互いに剥ぎ取ろうとする。まるで魔法のように、たちまち2人は一糸纏わぬ姿になってしまった。幼い身体を赤く火照らせて、淫猥に抱き合う2人の美幼児の姿は、息を呑むような美しさだ。
「くぅん……きゃうぅん」
「はぁはぁ……あああ…あ……」
 “てぃんだろす”の小さなペニスと、“よぐ=そとーす”君の包茎ペニスは、両方ともビンビンに勃起している。もう、2人は完全に発情しているみたいだ。

「はぁうん……ぺろぺろ……わぅぅん」
「ふわぁ!! ああ……そこはぁ……ダメなのだぁ…」
 最初に主導権を握ったのは“てぃんだろす”の方だった。
 もうカルアミルクは関係なく、“よぐ=そとーす”君の華奢な肌をぺろぺろ舐め回す“てぃんだろす”。舌先が薄桃色の乳輪をくすぐると、“よぐ=そとーす”君は少女のような声を漏らした。
「わぉん……くふぅん」
「いたっ! ぁああ…」
 “よぐ=そとーす”君が短い悲鳴を上げた。“てぃんだろす”が彼の腰にしがみついて、その先端まで皮が被ったペニスの先端を唇で咥えると、そのままにゅるんと剥いてしまったんだ。ピンク色の亀頭が顔を出し、僅かに付着した恥酵も、“てぃんだろす”はきれいに舐め取った。うーん、あの子もだいぶエッチに慣れてきたなぁ。それとも酔っ払って壊れてきているのかな?
「ふわぁあああ!!」
 でも、壊れてきているのは“よぐ=そとーす”君の方もらしい。可愛いペニスを愛しそうに頬擦りして、そのまま一気にぱくりと咥えると、“よぐ=そとーす”君は背骨が折れそうな勢いで仰け反った。“てぃんだろす”がペニスを咥えながら口をモゴモゴ蠢かせる度に、彼は瞳を潤ませて、切なげに身をよじり、女の子のような嬌声を漏らす。
 しばらくそのままフェラチオされて、震えながら悶えていた“よぐ=そとーす”君だったけど、
「あぁうう!! ひゃうん!!……お、おかえし…してやるぅ」
 “てぃんだろす”にペニスを食べられながらも、そのまま床に押し倒して、腰を軸にぐるりと180度回転した。今度は“よぐ=そとーす”君の目の前に、“てぃんだろす”の勃起したペニスが揺れている状態にある。ちょうど69の体勢だ……って、まさか!?

「わぉおおおん!!」
 今度は“てぃんだろす”が快楽の雄叫びを上げた。なんと、今度は“よぐ=そとーす”君が“てぃんだろす”のペニスを小さな手でゴシゴシとしごき、そのまま根元まで咥えてしまったんだ。69の体勢で、お互いにフェラチオし合う2人は、与え合う快楽の波に翻弄されているようだった。
 しかし、いわゆる『ふたなり』の“てぃんだろす”はともかく、“よぐ=そとーす”君は、下手な美少女よりも可愛いけど、正真正銘の男の子なんだよなぁ……こんな事してていいうのかな?
 でも、きっと彼自身も自分が何をしているのか理解していないのだろう。美少年と美少女の快楽に狂った喘ぎ声、ペニスをしゃぶり合う音と汗に濡れた肌が擦れ合う匂い。全てが一体となって、背徳的な快楽の宴を催していた。
 そして、そんな快楽の宴に招かれているのは、あの子達だけじゃないみたいだ。

「うふふふフ……御主人様ァ……」
 カチャカチャという音に導かれて視線を下に送ると、ソファーに座っている僕の足元に跪いて、ズボンのチャックを降ろそうとしている“しょごす”さんの姿があった。その眼差しは普段の温和そうな糸目ではなく、色情に狂った雌犬の光を宿している。
「あはァ…御立派でス」
 びん、と開放されたペニスが、彼女の頬を強く打った。いつのまにか、僕のペニスはこれ異常無いくらい固くそそり立っている。
 そう、あの『人外の情欲』が、僕達の理性を完全に淘汰していた。
「んんン……ちゅウ…ぷはァ……美味シ……」
 うっとりとした表情で、僕のペニスに指を這わせて、舌を絡める“しょごす”さん。僕の股間に電流のような快感が走る。このまま快楽に身を任せるのもいいけど、それだけじゃ申し訳ないよね。
「ふわああァ!!」
 むしゃぶるように奉仕を続ける“しょごす”さんが、身を震わせて喘いだ。僕が足先を彼女のスカートの中に潜り込ませて、秘所を指先で強くこすったんだ。ぐちゅっと熟れた果実を潰したように愛液が溢れて、指先を濡らしていく。
「あぁああああア……あふわァ!!」
 足の指で秘所を弄られるという屈辱的な愛撫にも、“しょごす”さんはしっかり感じていた。快楽の衝撃に耐えるように、夢中で僕のペニスに奉仕してくれる彼女の頭を、僕は激しく押さえ付けて、イラマチオを強要する。こうした乱暴にする方が、彼女は感じてくれるんだ。
「……こそこそ……」
 その時、僕は視界の隅にこそこそと逃げようとする“いたくぁ”さんの姿を見止めた。

 がしっ
 黒い着物の襟首をしっかりと掴み、逃げられないようにすると、“いたくぁ”さんは無表情のままジタバタと抵抗する。無駄な抵抗だけど。
「こうなったら、“いたくぁ”さんも楽しみましょうよ」
「……だから……わちしには……そげな趣向は……」
 暴れる“いたくぁ”さんを押さえ付けて、着物の裾をめくり上げると、ぺろんと白く肉付きのいい美尻が顔を出した。ふにふにと尻肉を揉みほぐし、頬擦りしたりしてお尻の感触をたっぷり味わってから、僕は彼女の尻たぶを左右に広げた。ほとんど色素のないピンク色のアヌスがピクピク震えている。僕はそこに太さ5ミリ、長さ20センチくらいのスティックバイブをあてがい――
「……ひゃうっ!……」
 そのまま奥まで挿入した。
「……ああぁああ……あああっ!!……あっ!!……」
 S字結腸の奥に先端がコツンと当たる感触が指先に伝わってくる。ニュルニュルとした腸液を潤滑油がわりにしながら、くるくるとスティックバイブを回転させて、挿入を繰り返した。
「……やあぁ……はうっ!……またぁ……お尻……ひうっ!……ばかりぃ……」
 しばらく僕にされるがままだった“いたくぁ”さんは、やがて全身をビクビクっと痙攣させて、ぐったりと脱力してしまった。どうやら完全にイったみたいだ。にゅるん、とスティックバイブを抜き取った僕は、それをぐったりとした彼女の顔の側に置いて――
「……ふひゃあああん!!……」
 また新たなスティックバイブをお尻の穴に挿入した。今度は直径1センチのを。
「一回イクたびに5ミリ単位でバイブを大きくしていきますからね。思う存分お尻でイって下さい」
「……そ……そんなぁ……ひぐぅ!!……あはぁああん!!……」
 ちなみに、太さ10センチのバイブまで用意してありますからね。限界までレッツチャレンジ。
 涙と情欲の光を目元からあふれさせながら、必死に僕に奉仕する“しょごす”さんの頭を撫でながら、僕はあの2人の方に意識を向けた。

「はぁはぁ……あぅん、くぅううん……ぷはぁ……」
「んちゅう…はぁああ……おいしい…ぞ……ぺろっ……」
 “よぐ=そとーす”君と“てぃんだろす”は、正面から抱き合いながら激しく互いの唇を貪っていた。2人の顔にはねっとりとした白濁液がこびり付いていて、互いのそれを舐め取り合っている。どうやら69のフェラチオの際、2人とも射精しちゃったらしい。
 そして、今も2人はビンビンに勃起したペニス同士を絡めてこすり合わせ、新たな快楽を求め合っていた。うーん、何だか凄い光景だなぁ。
「ぷはぁ……い、いくぞ」
「きゃうぅん……」
 今度は“よぐ=そとーす”君が主導権を握った。“てぃんだろす”を押さえ付けるように仰向けに寝かせて、勃起したペニスの真下に存在する、スジのような女性器を指先で広げる。にちゃぁ、と愛液の糸を引きながら、“てぃんだろす”の幼いアソコはしっかり女の喜びに熟していた。
「うううっ!!」
「ひゃぉおおおん!!」
 もう、愛撫する余裕もなかったらしく、いきなり“よぐ=そとーす”君は“てぃんだろす”の膣口にペニスを挿入した。彼の小さなペニスも幼い“てぃんだろす”にとっては十分な大きさらしく、“てぃんだろす”は悲鳴じみた快感の叫び声を上げた。“よぐ=そとーす”君も情欲に完全に支配されて、若さに任せた乱暴なピストンを“てぃんだろす”に叩きつける。2人は涙を流しながら身をよじり、快楽に打ち震えていた。

 そして――
「うううう――ッ!!」
「あぉぉん!!!」
 幼い性器から純白のザーメンを溢れさせながら、2人の少年少女は同時に達した。そのまま力尽きたように、“よぐ=そとーす”君はぐったりと“てぃんだろす”にもたれかかる。
 しかし――“てぃんだろす”はまだ、『女』の部分しかイっていないようだ。
「わ、わぅん!!」
「ふわぁ……な、なにを…するのだぁ……」
 “てぃんだろす”は“よぐ=そとーす”君をうつ伏せにして、お尻を持ち上げた。今は力なく垂れた小さなペニスとほとんど膨らんでいない陰嚢、そして点にしか見えないアヌスが顔を見せる。そこに“てぃんだろす”は、自分の爆発しそうなペニスを押し当てて――って、まさか!?
「うわぁああああ!?!?」
「わぉおおおおん!!」
 これまた愛撫する余裕がなかったらしく、“てぃんだろす”は“よぐ=そとーす”君のアヌスに、根元まで一気に己のペニスを挿入したんだ。

「いたぁ…ひゃうっ!…やめ…るの……だぁ!!……やめ…てぇ!!」
「はっはっはっはっはっ……」
 いきなり自分の菊門を貫かれた“よぐ=そとーす”君は、涙を流しながら“てぃんだろす”から離れようとするけど、“てぃんだろす”はしっかり彼の腰を押さえ付けて離そうとしない。それどころか、前立腺が刺激されたらしく、“よぐ=そとーす”君のペニスは再びムクムクと復活していった。
「あっあっあっあっ!! あはぁあああ!! いいっ! いいよぉ!!」
 もう、“よぐ=そとーす”君は明らかな快楽の嬌声を上げている。“てぃんだろす”は犬というよりサルのように腰を動かし、互いに快楽の海を飲み干そうとしていた。
 そして――
「いくぅうううううう!!!」
「あぉおおおおおおん!!!」
 “てぃんだろす”が“よぐ=そとーす”君のアナルに射精すると同時に、彼もペニスから水鉄砲のようにザーメンを噴出した。
「んんんんン――!!」
「……ああぁああ……あああぁぁ!!……」
「くうっ!」
 2人の絶頂が伝染したように、僕は“しょごす”さんの喉の奥に精を放ち、“しょごす”さんは僕の足指にクリトリスを押し潰されて、“いたくぁ”さんは太さ4.5センチのアナルスティックにアヌスを抉られて、それぞれほぼ同時に達したのだった……

 ぴんぽーん
 快楽の宴が終わり、全員がぐったりと虚脱状態にあった時、全てを現実に引き戻すようなチャイムの音が、玄関から響いてきた。
「はーイ、少々お待ち下さイ」
 何事も無かったように“しょごす”さんが立ち上がり、玄関に向かう――と、次の瞬間、
「きゃああああああア!!」
 また、絹を裂くような不定形美少女の悲鳴が轟いた。やれやれ、今度は誰が――いや、何が来たのだろう?
「……このにおいは……まさか!?」
 ぐったりしていた“よぐ=そとーす”が、がばっと跳ね起きて、玄関の方に向かう。僕達もよろよろと置き上がって、彼の後に続いた。
「ごごごごごご御主人様……まさカ……まさカ……あの御方ガ!!」
 また“しょごす”さんがガタガタ震えながら、僕の足にしがみつく。余程驚愕しているらしく、彼女の下半身は黒いドロドロの粘液に戻っていた。
 で、玄関先の新たな人影を見てみると――
「えっ!?」
 濃緑色の着物を纏った、節目がちの美しい和風の熟女――そう、忘れもしない最高の人妻!!
「初めまして、“しゅぶ=にぐらす”と申します」
 深々と頭を下げる“しゅぶ=にぐらす”さん。でも、彼女が『初めまして』と言った瞬間、僕に素早く目配せをしたのを、見逃さなかった。
「はい、初めまして。赤松 英といいます」
 それで全てを察した僕は、初めて会ったつもりで挨拶を交わした。流石に彼女とエロエロしていたって知られるのはマズイし。
「おお、わがつまよ。あいたかったぞ」
「もう、探しましたよ。余所様に御迷惑をかけてしまって」
「すまぬすまぬ。さあ、うちにかえろうぞ。もうそなたのはんのうがあったことなど、どうでもいいのだ」
 嬉しそうに“しゅぶ=にぐらす”さんの腰に抱き付く“よぐ=そとーす”君を、彼女は静かに微笑みながらそっと撫でた。その綺麗に結わえられた髪には、金色の山羊の角を模した髪飾りが――

「あれ?」
 それを見て、僕はピンと来た。もしかして、ここで“しゅぶ=にぐらす”さんの反応を感じたというのは――
「――もしかして、これの事ですか?」
 僕は例の髪飾りを差し出した。
「おお、これはまぎれもなく、わがつまのかみかざりではないか。なるほど、これがつまのにおいのしょうたいであるな」
 “よぐ=そとーす”君が、ひったくるように髪飾りを奪い取る。
「まぁ、無くしたと思っていましたが、赤松様が拾って下さったのですね」
「……なぜ、ひでぼんどのが、わがつまのかみかざりをもっていたのだ?」
「いや、別に、単に道端で拾っただけでして」
「なぜ、ろこつにかおをそむけておる」
 じろっと疑いの眼差しで、“よぐ=そとーす”君は僕の顔を見上げた。ううう、これはマズイかも……
「すすすすすすいませン……さ、さ、さ、サインを下さイ!!」
 と、そこに“しょごす”さんが震えながら真っ赤な顔でサイン色紙を“しゅぶ=にぐらす”さんに差し出してくれた。“しょごす”さん、ナイス。
「……はい、これでいいかしら?」
「ああああああああ、ありがとうございまス!! 私、大ファンなんでス!!!」
「うふふ、ありがとう……さて、帰りましょうか、あなた」
「うむ、そろそろおなかもすいてきたぞ」
 “よぐ=そとーす”君と“しゅぶ=にぐらす”さん、2人の奇妙な夫婦は、お辞儀しながら玄関先を離れた。いつのまにか夕刻を迎えていたらしく、オレンジ色の光が静かに注ぎ込む。ついに、この不思議なお客様ともお別れの時間が来たらしい。
「大変お世話になりました。いずれまたお礼に伺います」
「せわになったの、れいをいうぞ」
 “しゅぶ=にぐらす”さんは深々とお辞儀して、“よぐ=そとーす”君は元気に手を振る。

「……くぅん」
 その時、僕の背中に隠れていた“てぃんだろす”が、顔半分を覗かせて悲しそうな鳴き声をもらした。その黒目がちの瞳は、まっすぐに“よぐ=そとーす”君の方を向いている。どうやら、初めてできた同年代のお友達と別れるのが寂しいようだ。
 そこに、“よぐ=そとーす”君がトテトテとかけよって、
「……そなたとであえてとてもたのしかった。またあそびにいくからの」
 静かに、しかし力強く耳打ちすると、
「わん!!」
 “てぃんだろす”も嬉しそうに頷いた。
「……私も遊びに行きますね。個人的に」
 ……で、同時に“しゅぶ=にぐらす”さんも僕に耳打ちしてくれてたりする。うわーい。
「なにかもうしたか?」
「いえ、なにも……では、帰りましょう」
「うむ、きょうのゆうしょくは、かれーらいすとはんばーぐがたべたいぞ」
「はいはい」
 そして、2人は手を繋ぎながら、黄昏の光の中に消えて行った……
「……じゃあ、僕達も戻ろうか」
「わぅん」
「あの御方のサインを頂けるなんテ……感激でス!!」
「そんなに凄いの? あの人は」
「……無知は罪……」
 その時――僕は視界の隅に何かキラキラ光る物体を見つけた。
「ん?」
 そこは、ちょうど“よぐ=そとーす”君と“しゅぶ=にぐらす”さんが立っていた場所だ。腰を落として拾い上げると、それはキラキラと輝く古びた銀色の鍵だった。
「……『銀の鍵』?」

 次の日――
 いつもの様に“つぁとぅぐあ”さんに供物を持って行った僕は、信じられない光景を目撃した。
「あぁ……ひでぼんさんですねぇ」
 いつもの様に僕を迎えてくれたのは、『にへら〜』と微笑む“つぁとぅぐあ”さんだけじゃなかったんだ。
 “つぁとぅぐあ”さんが愛しそうに胸に抱き上げているのは、ウェーブのかかった長い焦げ茶色の髪を垂らした、眠そうな顔立ちの、しかし目を見張るような美しい全裸の美幼女だったんだ。いや、幼女にしては、なぜか胸がけっこう大きいけど……そう、まるで“つぁとぅぐあ”さんが幼女化したような!!
「……そ、その子は一体!?」
「この仔ですかぁ? ええとぉ……ボクの子供ですねぇ」
「…………」
 なにィィィィィィィィィィ!?!?

 続く


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