『ひでぼんの書』

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第1部第9話

 その兆候は、確か数日前からあった。

「ああ、やっぱり風呂は1番湯に限るなぁ……って、あれ? 湯船にお湯が無い!? 栓が抜けてる? おかしいな、体を洗っている時は確かにあった筈なのに……」

「わん、わんわん!!」
「え? “てぃんだろす”の分の肉まんが無い?」
「くぅ〜ん」
「仕方ないなぁ、僕の分を半分あげるよ」
「わん!」

「あラ、大変でス!!」
「どうしたの? “しょごす”さん」
「にわか雨が振ってきたので洗濯物を取り込んだのですガ、いつのまにかまた外に干してありまス!」
「あわわ、すぐ取り込まないと」

「……お茶が無い……」
「え、さっき煎れたでしょう?」
「……無いの……誰かに飲まれたっス……」
「またまたぁ、自分で飲んだのでしょ」
「……しくしく……」

「今日の供物も美味しいですねぇ……ありがとうございますぅ」
「いえいえ、じゃあ、僕も一口……ぶはっ!?」
「どうしたのですかぁ?」
「な、なぜおにぎりの中に苺ジャムが!?」
「苺ジャム美味しいですねぇ〜」
「…………」

 そして、今日――
 朝方、徹夜で仕事を終えた僕は、冷たい水で顔を洗おうと洗面所に向ったのだけど、
「……ん?」
 渡り廊下の真ん中、床上30cm地点に、左右にぴんと張られたロープがあった。
 ロープの端は、片方は柱に縛られているけど、もう片方は――隣室のドアの隙間に消えている。
 僕は勢いよくドアを開けた。
「っ!?」
 ドアの影にしゃがんでロープを掴む人影が、ビクっと細身の体を震わせる。
 イタズラの犯人は、その所業に似つかわしくない姿格好の美少女だった。いわゆるシスターが着るような深い藍色の修道服を身にまとい、頭にはシスター頭巾(コルネットと言うらしい)をかぶっている。きちんと切り揃えられた前髪が目元を隠しているけど、その桜の花弁を張り付けたような唇を見るだけで、可憐な美貌が見て取れるようだ。身長は“てぃんだろす”に並ぶくらい低いけど、胸とお尻はシスター服の中からもしっかり自己主張していた。いわゆるトランジスタグラマーというやつかな。
 専門的な事はよくわからないけど、よく見れば服装の細部が普通のシスターとは違う(と思う)し、本当に神様に仕える聖職者というわけではないだろうけど、外見は気弱そうな美少女シスターといった風貌だ。
「君がここ数日のイタズラの犯人だね? なぜそんな事をするんだい?」
 少し意識して強めの口調で話しかけると、
「え、あ、その、あの、えっと」
 言った僕が恐縮するくらい狼狽して、部屋の隅まで後退してしまった。
 はぁ……やっぱり彼女も『人外の存在』なのだろうか。

 その時、彼女は自分の懐に手を入れて、何かごそごそ探り始めた。
「う、あう、うう」
「ん?」
 動揺しながら謎のシスターが取り出した物――それは、手袋の先端に動物の頭を付けたような、よく腹話術師が使ういわゆる『マペット』と呼ばれる人形だ。まるでどこかのコメディアンみたいに、右手に魚と蛙の合いの子みたいなマペット、左手には黒い子山羊のマペットを装着した謎のシスターは、
『ふふふ、よく私の仕業と見破れたものね』
『そうだね、さすが“がたのそあ”を篭絡しただけの事はあるね』
 自分の口は動かさずに、両手のマペットの口をぱくぱく動かして喋った。腹話術らしい。
「いや、篭絡はしてないけど……僕の名前は赤松 英。渾名はひでぼん。貴方の名前は?」
『ふふふ、私達を目の前にして臆しないとは、良い度胸じゃないか』
『それも名前を知るまでだよ。教えてあげる。私達の名前は――』
「……“いごーろなく”……」
 背後からの無感情な声が、マペットシスター――“いごーろなく”さんの台詞を中断させた。
 振り向くと、“てぃんだろす”と“しょごす”さんを引き連れた、“いたくぁ”さんの勇姿があった。
『お前は……“いたくぁ”!?』
『なぜ吹雪の魔神がこんな所に!?』
 魚蛙と子山羊のマペットが隙の無い動作で身構える。でも、本体のシスターはわたわたと慌てていた。なんだかなぁ。
「“いごーろなく”ですカ? あまり聞いた事がありませんネ……少々お待ちくださイ。データベースで検索してみまス」
「わぅん?」
 “しょごす”さんと“てぃんだろす”は、そんな彼女の姿を見て首を傾げている。それに激昂したのは両手のマペットだ。
『私達の名前を知らないですってぇ!!』
『この邪悪の化身たる偉大な旧支配者の名前をぉ!?』
 で、肝心の本体は前髪の隙間から目の幅涙を流してシクシク言っていたりする。
「……マイナーだし……新版にも乗ってないし……」
 かなり酷い事を言う“いたくぁ”さんの感情の無い声は、どこか笑いを含んでいるように感じた。

『ええい、よくもよくもこの私達を馬鹿にしてくれたわねぇ!!』
『お礼に貴方達に真の邪悪を見せてあげるわ!! 覚悟しなさい!!』
 と、いきなり“いごーろなく”さんの体が青白い煙のような姿に変身すると、
「え!?」
「きゃうん!!」
 僕の側にいた“てぃんだろす”の口の中に飛び込んで、そのまま飲み込まれてしまったんだ。ああ、展開が早くてよくわからない……
「“てぃんだろす”!?」
「大丈夫ですカ?」
「……これは……マズイかも……」
 呆然と立ち尽くす“てぃんだろす”を揺り動かしていた僕と“しょごす”さんだけど、“いたくぁ”さんの不吉な無感情声が、その動作を止めた。
「マズイって、何がですか!?」
「……“いごーろなく”は……他者に精神憑依する事ができる……
……憑依された相手は……己の持つ……邪悪な衝動に……支配されてしまう……」
『ふふふ、その通りだよ』
『この子はもう邪悪の化身よ。何をするのか楽しみだね』
 “てぃんだろす”の口から、“いごーろなく”さんの楽しそうな声が聞こえた――次の瞬間、
「がるるるる……」
 今まで聞いた事もないような、殺気と邪悪に満ちた唸り声が“てぃんだろす”から発せられていた。その可愛らしかった顔は不吉な影に彩られて、三白眼の下には御丁寧に悪者線まである。
「“てぃんだろす”!?」
「御下がり下さイ」
 咄嗟に手を刺し伸ばそうとした僕を、“しょごす”さんが押し留めた。
『さあ、“てぃんだろす”よ!!』
『己の邪悪な衝動に身を委ねるのよ!!』
「わん!!」
 僕達に向って唸り声を上げていた“てぃんだろす”は――

『あれ?』
『ちょ、ちょっと、どこに行くの?』
 しかし、急にくるりと踵を返すと、素早く階段を駆け上がってしまった。
「……え?」
「追いましょウ」
 慌てて僕達も後を追う。“てぃんだろす”は僕の部屋に飛び込むと、押入れを開けて例の黒い靄の中に消えてしまった。
「なぜン・カイに?」
「……とにかく……追うべし……」
 僕達も靄の中に身を投じる。闇の中を落下する感覚がした直後、僕達は発光する水晶の柱が照らし出す暗黒の世界――ン・カイにいた。
 そして、そこには……
「がじがじ♪」
「痛たたたぁ〜、お尻噛んじゃダメですよぉ〜」
 あまり痛くなさそうに悲鳴を上げる無抵抗な“つぁとぅぐあ”さんと、嬉々として彼女のお尻に噛みつく“てぃんだろす”の姿があった。ああ、今日も“つぁとぅぐあ”さんは美しい……じゃなくって。
『こ、こら! 何をしているんだこの犬コロは!?』
『そんな事するんじゃない! 私達まで滅ぼされてしまうじゃないのよ!!』
 “いごーろなく”さんの声も慌てている。
「わうわう♪ はむはむ♪」
「ひぃ〜ん、髪の毛食べちゃイヤですってばぁ〜」

 そういえば、以前からなぜか“てぃんだろす”は“つぁとぅぐあ”さんを見ると噛みついていたっけ。その度に僕が軽く怒っていたから、最近はやらなくなっていたんだけど……
「……邪悪な心に……支配されているから……」
「……なるほど」
「……大変ですネ」
「かぷかぷ♪」
「ですからぁ、おっぱいに歯型が付いちゃいますよぉ〜、痛い痛いぃ〜」
 無抵抗のまま噛まれまくる“つぁとぅぐあ”さんの、威厳に満ちたおっとりとした姿は相変わらず美しいなぁ。
『なによ、こいつの邪悪な衝動ってコレなの!?』
『この子じゃダメよ。とりあえず戦略的撤退!!』
 “てぃんだろす”の動きが止まった。その口からあの青白い煙が出ると、猛烈なスピードで靄の中に逃げていく。
「追いましょウ!!」
「待てー!」
「……合点承知乃助……」
 珍しく怒った顔の“しょごす”さんを先頭に、僕達も“いごーろなく”さんを追跡する。“てぃんだろす”はぐったりとして“つぁとぅぐあ”さんに抱かれているけど、彼女がいるなら心配ないだろう。
「あのぉ……ボクの出番ってこれだけですかぁ」
 のんびりと悲しそうな声を背に受けながら、僕達は靄の中に飛び込んだ。

どんっ
「うわっ!?」
 靄を潜り抜けて押入れから出た僕は、背を向けて佇む“しょごす”さんにぶつかって尻餅をついてしまった。
「どうしたので――」
 ゆっくりと振り返る“しょごす”さんを見て、僕は台詞を途中で飲み込んだ。
 邪悪な笑み。三白眼。目の下の悪者線。
 ま、まさか!?
「……“しょごす”も……取り憑かれた……」
 背後からの“いたくぁ”さんの声は、とても不吉に聞こえた。
『ふふふ、その通りだよ』
『さあ“しょごす”よ、お前も己の命じる邪悪のまま動くのよ!!』
「了解しましタ」
 尻餅をついている僕に、獣のような動作で“しょごす”さんが飛びかかった。そのままほとんど抵抗する余裕もなく、僕はマウントポジションにされてしまった。一見、可憐な美少女メイドさんに見える“しょごす”さんだけど、さすがは脅威の超生命体。片手でトラックを持ち上げられるくらいの力持ちなんだ。僕は成す術もなかった。
「ふふふふフ、御主人様、御覚悟!!」

 にやり、と三白眼が微笑んだ瞬間、いきなり“しょごす”さんの熱い舌が僕の唇に刺し込まれた。反射的に舌を伸ばし、互いに舌を絡め合う。
『な、何をするの!?』
『こ、こらぁ!!』
 数分間、舌同士でチークダンスを踊り、たっぷり唾液を交換してから、ようやく“しょごす”さんとの情熱的なディープキスは終わった。悪役線を残したまま、彼女は期待に満ちた妖しい流し目を送っている。僕は即座にそれに答えた。
 目の前に広がる“しょごす”さんの形の良いお碗型のおっぱいを、メイド服ごと下から搾り出すように揉みほぐし、微妙に形を見せる先端の突起を指の腹でくすぐる。
「はぁああア……」
『何を感じているのだ!!』
『これがお前の“悪い事”なのか!?』
 思う存分美乳の感触を楽しんだ後、僕はいきなりメイド服ごと乳房に噛み付いた。
「あふぅぅゥ!! いイ、イイですゥ!!」
『痛ぁああああ!?』
『な、何をするぅ!?』
 乳肉を噛み切るぐらい強く歯を立てて、乳首を奥歯で押し潰す。“しょごす”さんが不定形生命体じゃなかったら、乳房は血塗れになっていただろう。そのまま、僕は彼女の股間に左手を伸ばし、何の愛撫も無しに親指を膣口に、人差し指をアヌスに突き刺すように挿入した。

「ひゃうン!!」
『くぁあああ!?』
『やぁああん!!』
 容赦なく挿入した指を回転させ、乱暴に指を曲げて肉壁を引っ掻き、アナルと性器の内部から指をOKマークに合わせてごりごりと擦る。その間も美乳には噛み付いたままだ。普通の人間なら物凄い苦痛に泣き叫ぶだろう責めだけど、“しょごす”さんはむしろこのくらい強い責めの方が感じるらしい。さすが不死身の生命体は違うなぁ。もっとも、これも『メイドさんはそうしなければならない』って勘違いしている可能性もあるけど……
『もうイヤぁ!!』
『ええい、やはり人工生命体はダメだ!!』
 案の定、耐えきれなくなった“いごーろなく”さんの青白い煙が、喘ぐ“しょごす”さんの口から飛び出した。うん、作戦成功だ。
 ところが――
「……きゃあ……」
 全然悲鳴に聞こえない悲鳴を上げる“いたくぁ”さんの小さな口に、あの煙が侵入してしまったんだ。ま、まさか……
「……ふふふのふ……」
 “いたくぁ”さんの透明な無表情に、悪者線が刻まれる。
「い、“いたくぁ”さん……あっ!?」
 と、急に“いたくぁ”さんは踵を返して、部屋を飛び出し階段を駆け下りてしまった。慌てて僕も後を追おうとする。“しょごす”さんも、
「あらあラ、大変でス」
 何事も無かったように立ちあがり、僕に追随した。
 そして、1階に降りた僕達が見た光景とは……

「ああー!?“いたくぁ”さん、全自動洗濯機の液体洗剤注入口に墨汁を入れたらダメー!!」
「生ゴミと燃えないゴミと資源ゴミをかき混ぜたら駄目でス!!」
「窓を全開にしてバルサン焚くなー!!」
「一晩かけてコトコト煮込んでいるカレーを水で薄めてはいけませン!!」
 あああー!?“いたくぁ”さんがここぞとばかり悪い事ばかりしてる!! 何か違う気もするけど、今までで最大の被害だ!!
「どうしましょウ? 御主人様……」
 珍しく“しょごす”さんが困った表情を浮かべている。
「とにかく、止めないと」
「どうやって止めればイイのでしょうカ。あの方は偉大なる邪神、旧支配者なのでス……ああ見えテ」
「そうなんだよね、“いたくぁ”さんは僕達じゃどうにもならない超高位存在なんだ……あれでも」
「……しくしく……」
 一瞬悲しそうだったけど、“いたくぁ”さんは元気に悪い事を続けている。僕達はそれを止める手段を考えかねていた――が、急に“いたくぁ”さんの口から青白い煙が飛び出して、僕達と“いたくぁ”さんの間でマペットシスター“いごーろなく”さんの姿に実体化したんだ。
『くっ、やはり旧支配者に精神憑依するのは無理があったか』
『操るのは失敗ね』
 苦しそうに“いごーろなく”さんは言い放った。
「…………」
「…………」
「……こほん……」
 僕と“しょごす”さんのジト目が“いたくぁ”さんに突き刺さる。“いたくぁ”さんは慌てた感じの無表情で、
「……捕まえるなら……イマノウチ……」
 びしっと“いごーろなく”さんを指差した。どう見ても誤魔化しているようにしか見えないけど。

 前方には“いたくぁ”さん。後方には“しょごす”さんとオマケの僕。逃げ道を断たれた形の“いごーろなく”さんだけど、その顔には不敵な笑みさえ浮かんでいた。
『ふふん、こんな事で私達を止められると思うな』
『こうなったら実力行使よ』
 がばっと威嚇するように“いごーろなく”さんが両手を掲げる。これから恐るべき邪神――旧支配者としての真の力が発揮されようとしているんだ。
 ひょい
「あ」
 でも、そんな力を屋内で振舞われたらたまらないから、止めさせよう。
 僕は素早く“いごーろなく”さんの両手にあるマペットを取り上げた。
「え、あ、あう、返し、てぇ」
 ぴょんぴょん飛び跳ねて僕の掲げるマペットを取り戻そうとしているけど、身長差があり過ぎて全く意味が無い。
 案の定、最初に出会った時のように、マペットが無いとオドオドビクビクしたシスターモドキになってしまった。
 さて、これからどうしようか……
「ふっふっふっふっフ……」
 ぞくっ、と背筋が凍りつくような声が僕の背後から響いた。
 見れば我等が“しょごす”さんが、さっきとは違う意味での三白眼で、じっと“いごーろなく”さんを見据えている。
「よくも御主人様の家を荒らしてくれましたネ。誰であろうト、メイドとして許す訳にはいきませン」
 地獄の底から響くような声に、むしろ僕が怖くなった。慌てて“しょごす”さんの前から離脱する。
 でも、僕以上に慌てているのは“いごーろなく”さんだった。
「え、あの、その、でも、私は、やってない、の」
「問答無用でス!!」
 次の瞬間、おどおど怯える“いごーろなく”さんの全身を、目にも止まらぬスピードで“しょごす”さんの身体から伸びた触手の群れが、雁字搦めに拘束した。
「お仕置きですヨ!!」
「やぁ、あああ、あああああ!」

 親指ほどの太さの触手が、“いごーろなく”さんのボリュームのある胸を突ついた。まるで底が無いみたいにずぶずぶと触手が沈む。どれほど柔らかい乳房なのか、僕は揉み解したい衝動に駆られた。本人は猛烈に嫌がっているけど。
「あああっ、あっ」
 びりびりと無機質な音を立てて、シスター服の胸の部分だけが器用に破り取られた。下着は着ていないらしく、白くて艶やかで柔らかそうな巨乳がぶるんと踊り出る。やや大き目の乳首は濃いピンク色で、男の獣欲をたまらなくそそらせてくれた。
「あう、う、ううっ」
 その極上の乳房に触手が絡んで、ぎゅっと絞るのだからたまらない。根元から先端に少しずつ絞る位置を滑らせると、巨乳はボール型からひょうたん型、最後は鏡餅みたいな形にもにゅもにゅと変形する。それを何度も往復させると、まるで乳絞りみたいに柔らかく乳房は形を変えて、圧力で乳首と乳輪はぷっくりと膨れていた。今にもそこから母乳が噴き出しそうだ。
「ああっ!はあっ!ああうっ!!」
 そのいやらしい乳首に先端が先割れした触手が噛み付いた。一体どんな刺激なのか、“いごーろなく”さんの悶え方は尋常じゃない。前髪に隠された瞳からは止め処無く涙が流れているくせに、その悲鳴には明らかな嬌声が含まれていた。
「うふふふフ、胸だけでそんなに感じるなんテ……これはどうですカ?」

両足に絡んでいた触手が左右に開かれた。ロングスカートが無理矢理広げられて、むちむちした張りのある生足と、奥に隠された――やっぱり、下着は無い――秘所が露わとなる。子供っぽい外見とは裏腹に、しっとりと成熟した大人の性器はひくひくと淫口を開いて、アヌスもひくひく口を開け閉めしている。それはどちらも愛液でぐしょぐしょに濡れて、雌の匂いを周囲にアピールしていた。面積は狭いけど濃いヘアから大き目のクリトリスもしっかり頭を覗かせている。シスター風の服装も手伝って、見た目はかなり清純そうなので、その淫猥な秘所のギャップが逆にそそらせてくれる。
 そこに触手の群れが侵攻した。
「ふわああ、あ、あ、あああう!!」
 細い触手が膣口とアヌスをこじ開けて、そこに糸のような触手が何本も侵入した。内側から膣壁と腸壁をくすぐり、擦り、撫で、突つく。外側も細い触手がクリトリスを剥いて絞り上げ、小陰口をこちょこちょくすぐり、アヌスの皺をほじくる。あまつさえ尿道にまで細い触手が侵入しちゃってる。もう、“いごーろなく”さんの嬌声は叫び声に近かった。
「くはぁ!はあ、ああ、あああうっ!!きゃああっ!!」
「ご近所迷惑なのデ、少し声を落としましょうネ」
 ずるり、とかなり太目の触手が“いごーろなく”さんのおへそから上に這い上がって来た。絞られた乳房の間に無理矢理潜り込んで、谷間から頭を出し、鎌首をもたげて、喘ぐ“いごーろなく”さんの口にいきなり潜り込んだ。
「ん、ん、んんん〜!!」
 ディープスロートどころか食道まで蹂躙してるんじゃないかと思うくらい、ずぶずぶと触手が潜り込む。苦しそうに喘ぐ姿に、僕は可哀想と思うと同時にぞくぞくするような加虐心をそそらされた。
「でハ、クライマックスでス」

 両手を拘束している触手が天井近くまで上昇していく。吊り下げられた形となった“いごーろなく”さんは、まるでこれから生贄になる乙女のように神々しかった。いや、実際に神様なんだけど。
「んふう!んん、ん、んんんん〜!!」
 触手が“いごーろなく”さんの両足を空中でM字開脚に広げて、ロングスカートをめくる。責められっぱなしの秘所は愛液がぼたぼたと滴り落ちるくらい熟していた。
「御覚悟でス!!」
 そして、スパゲティぐらいの太さの触手が寄り集まって、2本の太い触手になった。それが垂直に上昇して、“いごーろなく”さんの膣口とアヌスの真下に位置して――
 ずにゅぐちゅっ!!
「んううううううう!!!」
 突然、両手を吊り下げていた触手が緩められた。重力の法則に従って落下した身体が、容赦無く触手に突き刺さる。
「うんんん!!んんんん!!んううううう〜!!!」
 性器とアナルを一気に奥まで串刺しにされた“いごーろなく”さんは、発作でも起こしたようにガクガクと身体を痙攣させた。その痙攣が収まる間も無く、再び両手の触手が彼女の身体を吊り上げて、触手が抜き取られた跡がぱっくり口を開けた膣口とアヌスが奥まで顔を覗かせて――
 ぐちゅぶちゅう!!
「うんんんんんんん!!!」
 また、落下した“いごーろなく”さんが触手に突き刺さった。何度も何度も、それが繰り返されていく。

「んふぁ!!んぐうううう!!うんんんん!!!」
 その間にも、他の触手は容赦無く全身の性感帯を陵辱している。触手による全身愛撫とセックスとアナルセックス、それにイマラチオとパイズリで同時に責められている“いごーろなく”さんは、あまりに無惨で、あまりに淫靡で、そして、美しかった。
「……ねぇ、“しょごす”さん」
 僕は前屈みになりながら“しょごす”さんの肩――だと思う部分を叩いた。
「何でしょうカ?」
 首だけぐるりと回転して、にっこりと美しい微笑みを向けてくれる“しょごす”さん。でも、今の僕には彼女に笑顔で応える余裕は無い。あの『人外の淫靡』が、例によって僕の理性を粉々に粉砕してしまったんだ。今の僕は、とにかく女性を犯す事しか考えられなかった。そんな僕の情けない事情を、“しょごす”さんは僕の下半身を覗いて察してくれたようだ。
「なるほド……しかシ、申し訳ありませんガ、今の私はこの状態ですシ……」
 首を傾げる“しょごす”さんの今の姿は――ちょっと描写は避けようと思う。ビバ、不定形の身体。
「“いごーろなく”様の膣圧はかなりの強さなのデ、御主人様のペニスが千切られる可能性が高いですネ」
 さらりと恐ろしい事も言ってくれる。
「でハ、あの御方デ……」
 ちらり、と“しょごす”さんが横目で見た先には、平然とお茶をすする“いたくぁ”さんの姿があった。
「なるほど」
 僕達と目が合った瞬間、“いたくぁ”さんは無表情のままお茶を噴き出した。
「……ちょっと……マグロの兜焼きを……買ってくる……」
 そそくさと逃げようとする“いたくぁ”さんの着物の襟を、僕はがっしり掴んだ。そのまま後ろから抱き締める。
「……はなせ〜……この婦女暴行犯〜……」
「悪い事をしたら御仕置きされるのが人間世界のルールですよ」
「……わっちは……人間じゃないでありんす……」
「じゃあ、婦女暴行にはならないですよね」
「……がびーん……」
 マヌケな会話を交わしつつ、僕はジタバタ生きの良いマグロみたいに暴れる“いたくぁ”さんを押さえ付けて、黒い着物の裾をぺろんと剥いた。すらりとした綺麗な脚と、程好く肉付きの良い小さなお尻が丸見えになる。
「お尻の方が好きなんですよね」
「……やめっ!?……」
 僕はいきなり彼女のアヌスにいきり立つペニスを挿入した。正直、僕自身に愛撫する余裕が無かったんだ。前戯もしていないのに、にゅるんとすんなり挿入できる“いたくぁ”さんのアナルは、そのくせ抜群に締まりが良い。
「……ふわぁああ!……ひど……い……あふぅ!!……」
 尻肉を掴んでバックからリズミカルにアナルを犯す。“いたくぁ”さんの抵抗もだんだん弱くなって、声にも快楽の喘ぎ声が混じってきた。
「ふぐぅうう!!ううん!!うううううん!!!」
 まるで杭打ち機のように激しくピストンされる“いごーろなく”さんも、今では涙と愛液を垂れ流しながら肉の喜びに打ち震えている。
 そして――
「ううっ」
「……ああああぁ!!!……」
 ぶるっと“いたくぁ”さんがお尻でイクと同時に、僕も腸の奥まで精子を放った。ずるり、とペニスを抜き取ると、床に崩れ落ちた“いたくぁ”さんの剥き出しのお尻の割れ目から、白いザーメンがトロリと零れ落ちた。
 ワンテンポ遅れて、
「んふぅうううううう!!!」
 “いごーろなく”さんも触手を引き千切るように身体を仰け反らせて、ビクビクっと痙攣しながら、気絶するように絶頂を迎えた……

「えーと、大丈夫ですか?」
 数分後、落ち付いた僕と“しょごす”さんは、廊下の隅でしくしく泣いている“いごーろなく”さんを、なんとなく慰めていた。
「あ、そうだ……これ返しますね」
 僕がマペットを見せると、突然ひったくるように彼女はそれを奪い取り、両手にはめて、
『よよよよよ、よくもこの私達をこんな目に会わせてくれたわねぇ!!』
『この借りは必ず返すぞ!! おぼえてらっしゃい!!』
 何のダメージも無くすくっと立ち上がって、ダッシュで玄関から外に飛び出して去って行った……
「……結局、彼女は何しに来たのだろうか」
「楽しい御方ですネ」
 見送る僕と“しょごす”さんの後ろから、
「……私には……フォロー無しですか……そうですか……」
 お尻をさすりながら、おどろおどろしい無表情で僕達を睨む“いたくぁ”さんの姿があった。
「……しくしく……」
 そういえば、この方もなぜここに来るのだろうか?
 なんとなく彼女の頭を撫でながら、僕はそんな罰当たりな事を考えていた。

 1週間後――僕は久しぶりに日用品の買い物に出かけていた。
 昨日から、“しょごす”さんが定期メンテナンスとかで3日間だけ会社に戻る事になったんだ。
 仕事の打ち合わせも兼ねていたので、“てぃんだろす”は“つぁとぅぐあ”さんに預かってもらっている。僕は久しぶりに1人の時間を満喫していた。
 そんな僕が、目の前の曲がり角を曲がった時――まるでどこかの少女漫画みたいに、ある女性に激突する事を、しかし、その女性が少女漫画とは違って、着物姿の妙齢の熟女である事を、そして、その女性が山羊の角を模した髪留めを付けている事を、今の僕は知るよしも無かった。

 続く


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