結局、最後に指差されたのは――足。
さらに厳密に言うならば、足の裏であった。
「はいけってーい。それじゃ、動かすからね」
「動かす…?」
その意味を聞くよりも早く、美奈は自分の両足首が持ち上げられるのを感じた。
「なっ…?えっ!?」
「びっくりした?それ、このリモコンで動かせるんだよ」
頭を上げて有紀を見ると、その手には四角い物体が握られていた。
どうやらそれを使って、美奈の両足首に巻かれたベルトをコントロールしているらしい。
「凄いでしょー。パパにおねだりして作ってもらっちゃった」
自慢げにリモコンを見せ付ける有紀。
正確に言うならば、ベルトとベッドを繋ぐワイヤーを伸縮・湾曲させることによ
って、装着者の姿勢を制御できる仕組みになっているのである。
「どんな気分?」
「ひっ!」
無邪気に顔を覗きこんでくる有紀は、もはや恐怖の対象でしかない。
美奈のあからさまな脅え方に、有紀は苦笑いを浮かべた。
「そういう態度、気に食わないなぁ…ポーズ、凄いのにしようかな」
カチカチと、再びリモコンが操作された。
すると今度は、美奈の両足を広げるようにワイヤーが動き始める。
「っ…!」
美奈は反射的に両足に力を込めた。
「今更何を」と言えばそれまでだが、強制的に足を開かされるというのは、やはり羞恥心を煽られる仕打ちである。
「くっ……うぅ…」
しかし抵抗も空しく、くっついていた膝と膝が離れていく。
「だから無駄なんだって。ほーら、美奈ちゃんのお股がよく見えてきましたよ〜」
開脚させただけでは飽き足らず、有紀は更にその足首を太腿に近づけさせる。
そうなれば、自然と膝が曲がり――
「はい、出来上がり」
ワイヤーが停止した時には、美奈は背中をベッドにつけたままにM字開脚のポーズをとらされていた。
「生意気な態度とるからこうなるんだよ。よし、早速始めよっか」
「……」
「聞いてる?」
「ゃんっ!」
言葉も耳に入らず羞恥に身を震わせていた美奈だったが、
足の裏に指をおかれると、それだけでビクンと反応した。
濃紺の靴下に包まれた足の裏は、互いに20センチほど離れて有紀の方を向いている。
「まずは軽くね。こちょこちょこちょ……」
「っく!!っ…ぅく……あっ、やめっ、ゃははははっ!」
ひっかくように両足の裏を刺激され、美奈は数秒も耐えられずに笑い声を上げた。
「んー、いい声。さて、弱いのはどこかなー?」
有紀は美奈の右足から手を離すと、両手で左足の裏をくすぐり始めた。
「うひゃははっ!はっ、ははっ、あははは!あははははぁっ!!」
土踏まずや踵だけでなく、くねくねと悶える足の指すら攻撃対象にされる。
美奈は固定された足首から先を必死に暴れさせるが、そんな僅かな動きではくすぐりから逃れることはできない。
有紀の手は美奈の足の裏を調べ尽くすように、隅から隅までを這いまわる。
その巧みな指の動きは、今まで美奈が知っていた「くすぐり」のそれとは全くの別物であった。


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