「「ふーん…」」
何か言いたそうな顔をしていた智恵と千尋だったが、少しすると同じ結論に至った。
「私達もマッサージの続きを…」
「動かないで下さいね〜」
二人は先程とは違う意図を持って、奈菜の体に手を伸ばした。
智恵の指が奈菜の首筋から背中のラインをつつーっと動く。
一本の指がゆっくり舐めるように降りたかと思えば、数本の指が刷毛のように素早く撫であげる。
一方千尋は、足の付け根から踵までに狙いを定めた。
十本の指先が、触れるかどうかの微妙な位置で奈菜の肌を掠める。
三人のくすぐりは笑い転げる程のものではないが、それが故に我慢し辛く、
奈菜はついつい声を漏らしてしまうのであった。
「っくく……さ、三人とも、やめてったら…きゃんっ!もう!
全然マッサージじゃないじゃないの!」
奈菜の言い分はもっともであった。
三人の指使いは既にマッサージのそれではなく、彼女をくすぐって楽しむ為の動きになっている。
「まあまあ。これはマッサージの報酬ということで」
もはや隠す気もないらしく、智恵がそう言って悪戯っぽく笑う。
言いながらも指は止まらず、奈菜の体は時折小さく跳ねた。
(ダメ…今はともかく、これ以上激しくされたら…)
三人がその気になる前に、何とか脱出しなくてはならない。
「っ…三人とも……いい加減にしなさーい!」
奈菜は無理矢理口元を引き締め、腕立てをするようにしてがばっと上体を起こす。
(やった!)
急に動いたので、三人に妨げられることはなかった。
続いて四つん這いの姿勢になり、そこから一気に立ち上がろうとし―
彼女の行動はそこ阻止された。
裕香が奈菜の尾底骨の辺りに両親指をあて、ぎゅっと押し込んだのである。
ズキン!と腰全体を強烈な痺れに貫かれ、奈菜は声にならない声と共にマットへたりこんだ。
「ふふっ…今の、完璧にツボに入りましたよね?」
痛みは殆ど無かったが、体に鈍く響く余韻のせいで腰に力が入らない。
「まだ終わってないんですから、途中で逃げたら駄目ですよ。
そんな勝手な先輩には…お仕置きしてあげなきゃいけませんね」
そう言うと、裕香は奈菜が立ち上がれないように背中に跨がった。


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