「さーて、どうしちゃおっかな〜?」
イニシアチブをとったさつきは、指をわきわきと動かしつつ智恵を見下ろす。
「ホント、ズルいったら……どいてよぉっ…」
嫌でもくすぐったそうな指の動きが目に入り、智恵の声が微妙に震えた。
両手をさつきの方へと向けて、何とか抵抗の意を示す。
「ず・る・く・な・い・よ」
『よ』と同時に両腕を伸ばし、指先で智恵の横腹を軽くつつく。
「きゃうっ!」
予想はできていたものの、どうしても声が洩れてしまう。
「どう?さっきのあたしの気持ちが分かったかな〜?」
「や、やめっ……あぅっ!?っ…ひっ……ぅんんっ!!」
脇腹にあてられた10本の指は全てが同時に動くことはなく、その内の1・2本ずつがランダムに動いていた。
薄いキャミソールを通して、さつきの指先が柔肌に食い込む。
「ぅくっ…!!」
それぞれのくすぐったさはそれほど強くないので、すぐさま吹き出したりはしない。
基本的に智恵はくすぐりに強い方であり、現にはっきりと笑い声を上げたのは勉強中に不意打ちを受けたときだけだ。
しかし…不規則で心の準備のできない刺激に、きつく閉じた口が少しずつ緩んでいってしまう。
(このままじゃ、さすがにマズいよね…)
なまじ耐性があるため不慣れな感覚に、焦りを覚える智絵。
「っこの……ちょ…調子に、乗って…!」
くすぐったさに耐えつつさつきの腕を掴むが、その力は弱い。
「はいはい、無駄無駄。よいしょっと」
さつきは邪魔な智絵の両腕を床に押し付け、両膝と智絵自身の胴で挟みこむ。
智恵も防御ではなくくすぐり返すなりしていれば反撃の糸口になったかもしれないが、それも後の祭りだ。
もはや完全に抵抗の手段を封じられ、あとは視線でさつきを牽制する他なくなってしまった。
「さっちゃん…今やめないと、後で思いっっきり腋くすぐり返すよ」
ぐっと目に力をこめて強がるが、この状況での効果は微々たるものだ。
一瞬だけ迷ったものの、さつきはふふん、と鼻で笑ってみせた。
「こんなチャンス逃すわけないじゃん。ともちゃん、くすぐりに強いんだよね…
けど、どこ触られても大丈夫なのかなぁ?」
「え…?」
考えてみたこともなかった。
しかし考えてみれば、誰でも触られる箇所によってくすぐったさは違う。
それなら、もしかしたら自分にも弱点が?
智絵の胸中にそんな不安が生まれる。
「ともちゃんの体、じっくり調べてあげるからね」
さつきの手が智絵の首筋に触れ、すすーっと肌を撫でる。
そして鎖骨を滑り降り、さらに下の方へと向かう。
勿論、反応の大きかった所を何度も調べるのは忘れない。
「ふぁ……ぅんっ…」
腋と胸の間のあたりをしつこくくすぐられ、智絵は鼻にかかった声を洩らした。
(今のとこ、結構くすぐったぁ……けど…)
「んふっ……た、たいしたことないね。確かにくすぐったいけど、こんなもんなら…我慢できるよ」
若干の強がりも含まれていたが、嘘ではない。
智絵には、この程度のくすぐったさなら我慢できるという自信があった。
「そう?じゃ、こっちはどうかなー、っと」
さつきは動じず、キャミソールに守られていない下腹を指先でなぞり始めた。
「ふぅ…っ……―――っっ!?」
ぞくっ、と全身が震えた。
(お……おへそ…?)
突然の強烈な刺激に戸惑いを隠すことができない。
さつきの指先がおへその中に入り込んだ瞬間、智絵は経験したことのないようなくすぐったさに襲われたのだ。
恐る恐るさつきの顔を見上げると、ばっちりと目があった。
「この辺…弱いんだ?」


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