そっと手を伸ばし、指先をちょんと智恵の背中に触れさせる。
そして彼女に反応する間を与えずに、指を下へと滑らせていく。

つつーっ……

「ひっ!?」
効果はてきめんだった。
背筋を指先でなぞられ、智恵は思わずがたん!と椅子から腰を浮かせた。
「あ、今の効いたんだ?ほら、勉強なんかやめちゃいなよ」
さつきは調子にのって智恵の背中を撫で回す。
「やめ、ちょ、やめてったら!それ、くすぐった……」
さつきの手は、驚きで隙だらけになった智恵の腋の下に滑り込む。
「じゃあ遊んでくれる?」
「きゃはっ!!ぅくっ……この、いい加減に……――っ!」
「あっっ!?」
智恵が立ち上がろうとした瞬間、椅子のキャスターが大きく滑った。
その後の衝撃を想像し、さつきは思わず目を閉じてしまう。
智恵の視界がぐるんと回り、天井が見え――
そして一瞬の後、智恵はどんっ!と背中を床に打ちつけた。
「ぅぐっ!」
絨毯は敷いてあるものの、やはりそれなりに痛い。
智恵は数秒間は声も出せず、しばらく疼痛に顔をしかめていた。
「ごめん。ホントに」
本気で痛がっている様子に、さすがのさつきも済まなそうに頭を下げる。

「…さっちゃん」
一分ほど腰をさすって呻きながら休み、智恵はゆっくりと立ち上がった。
「すいませんごめんなさい何でもしますご主人様」
平伏してひたすらに謝罪の言葉を並べるさつき。
「言ったね?」
「え?いや、やっぱ何でもってのは無しで…」
さつきがふと顔を上げると、眼前にまで智恵の顔が迫っていた。
『いかにも』な笑顔。
さつきはそのプレッシャーに圧され、1歩2歩と後ずさる。
「待って、やっ、ちょっと……なに?」
後ずさっている内に、踵がベッドにぶつかった。
これでもう、後ろに下がれない。
「何だと思う?」
相変わらずの笑顔。智恵はさつきとの距離をつめ、その肩に手を置く。
「あっ?」
ぐいっと肩を押され、さつきはベットに腰掛ける形になった。
「あの、ともちゃん?せめて何するか言ってから…」
「お仕置き」
言うが早いか、智恵はさつきの体に手を伸ばす。
「やっ…!」
反射的に身を引くが、智恵の方が僅かに早い。
智恵の両手は、しっかりとさつきの脇腹を捕らえていた。
「そんなにくすぐりが好きなら、た〜っぷりやってあげるよ」
言うが早いか、智恵は10本の指を動かし始める。
「ぅひっ!ゃめ、や…っく……きゃはははっ!!!」
「ん?さっちゃんってくすぐられるの弱いの?」
くすぐりを始めて何秒も数えないうちに甲高い笑い声があがり、
智絵はくすぐり続けながら問いかけた。
「にぃっ…苦手っ!だか、らあぁっ!あはっ…おねがい、止めっ……」
「やっぱり弱いんだ。よーし、徹底的にこちょばそう」
「そんなっ…ひど……いぃっ!やあっ……っくうぅぅぅぅっ!!」
脇腹にくわえられる強烈な刺激に、さつきの体はビクビクと跳ねる。


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