数枚並べられたマットは教室の四割近くを埋めていて、五人全員があがってもまだまだ余裕がある。
「もぉ、いい加減にしてよっ…重いったら」
「班長よりは軽いもーん」
玲奈は上体を起こそうとするが、少女たちは次々に覆い被さってその動きを封じた。
「美保ちゃん、アレよろしく」
「分かってるよ〜」
一人だけ立ったままだった美保が、自分のランドセルへと歩いていく。
「アレ、って?」
寝ころんだままでは、頭側の美保を見ることができない。
玲奈は問いかけるが、三人は「ひみつー」と笑って応じなかった。
少しの間、教室には美保が荷物を漁る音だけが響く。
「おまたせ。全部使っていいからね」
美保が玲奈の視界に入ってくると、彼女は両手いっぱいに筆を抱えていた。
筆は大小様々で、どれも新品のようだ。
「これ…?」
「美保ちゃんち、文房具屋さんだから。いっぱい持ってきてもらったの」
「そうじゃなくって、筆なんか何に使うの?」
不思議そうに眉根を寄せる玲奈の首筋に、夏美が筆を伸ばした。
「どうすると思うー?」
筆の毛先が肌に触れ、玲奈は「ぅひゃっ!」っと首をすくませる。
「じゃ、まず…」
「うん。このままじゃやりにくいもん」
四人は目配せすると、玲奈のベージュのトレーナーを一気に捲りあげる。
「なっ!?や…やめてよ!こんなの、どう考えたってやりすぎでしょ!?」
これはいくらなんでもまずい。
玲奈は本気で手足をバタつかせて抵抗したが、四対一ではさすがに勝ち目がない。
無理矢理に両手を持ち上げられ、さしたる時間も保たずに脱がされてしまった。
そして四人はそれぞれ玲奈の両手足に跨る。
今は秋だが、今日はそのわりに暖かい。
そのため上着を一枚しか着てこなかったので、玲奈の上半身には既に下着一枚しか残されていなかった。
背中には、マットの微妙な冷たさを感じる。
「ブラジャーつけてるんだ。大人〜」
子供用の金具もないソフトブラではあるが、確かにそれはブラジャーではある。
年相応に膨らみ始めた胸が、僅かに下着を押し上げていた。
「こっちはどうだったかなぁ?」
続いて真奈がスカートをめくり、玲奈の下着を完全に晒す。
「足細いよねー」
「パンツ、このちっちゃいリボン可愛い〜」
玲奈の顔にかぁっと血が昇る。
いくら相手が同性の年下とは言っても、こんな風に下着を鑑賞されるのは普通ではない。
四人の視線が皮膚にちくちくと突き刺さる。
「ねぇ。せっかくもってきたんだからさ…」
美保が手にした筆の束を広げてみせた。
「あ、ごめん。忘れてた」
三人は思い思いに気に入った筆を受け取り、両手に構える。
「やっとできるね〜」
「班長なかなか寝てくれないんだもん」
筆を用意してきたことといい、少なくとも、今から始まることは予定に入っていたようだ。
「ね…ねぇ。何するつもりなの?」
二度目の問いに、今度は遥から答が返ってきた。
「お掃除だよ。班長いつも『掃除しなさい!』ってゆってるでしょ?」
「えっ?」
まるで意味が分からないといった表情を浮かべる玲奈に、真奈が顔を近づける。
「だからぁ。みんなで班長の体をお掃除して、キレイにしてあげるの」
言い終わると同時に、真奈の持った筆が玲奈の右腕に触れた。
「あっ…!」
小さく洩れたその声をきっかけに、全員の筆が玲奈の肌に降りたった。
そしてついに、計画されていた悪戯―いや、筆を箒に見立てた「お掃除」が始まる。


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