これは。まさか・・・。 

頭同士とはいえ直に触れ合い、何かのスイッチが入ったのでしょうか。 
宮本は真剣な眼差しでちえりちゃんを見つめ、ちえりちゃんは頬を桃色に染めつつも、
その視線をきちんと受け止めています。 
今はちょうど、誰も(僕除き)そちらを見ていません。 
やがて二人は目を細め、顔と顔、唇同士がだんだんと― 

だがっしゃぁぁぁぁん!! 

静かな図書室に、突如豪音が響き渡りました。 
今の衝撃音の発生源は一体?
…すぐに見つかりました。 
宮本たちの近くの棚が倒れ、本を巻き散らしています。
棚の上には一人の天使。 
「この、馬鹿天使いぃぃ!」僕はダッシュでドクロちゃんに駆け寄りました。 
「何やってるのドクロちゃん!この前あれ程図書室では静かにって言ったでしょ!?」 
ドクロちゃんは悪びれた風もなく 
「だってボク、どうしてもこの本に手が届かなかったんだもん」 
と、一冊の本の表紙を僕に見せてきます。何々…
『おとこのことおんなのこ からだのひみつ その2』 
「二冊目あったんだ!?いや、そうじゃない。 
こんな本ばっか読んでるんじゃありませんよ破廉恥なって、ちょっと待てえぇぇ!」 
あろうことか、ドクロちゃんは宮本たちの方へと近づいていくのです。 
「あー、やっぱりちえりちゃんと宮本君だー!ねぇねぇこれは何て読むぐふ」 
何とか僕はドクロちゃんに追い付き、口を塞いで図書館の出口へとひきずっていきました。 
倒れた本棚の事も気掛かりではありますが…ただでさえ二人のキスを遮ってしまったのに、 
これ以上場を引っかきまわす訳にはいきません。 
「桜君、さっきの音…」
「うん。でも、ごめん!ちょっと急ぐから!」 
僕は静希ちゃんに後のフォローを頼み、展開に着いてきていないドクロちゃんを担ぎあげ、 
脱兎の如く家路に着いたのです。 


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